文字 
  • ホーム
  • 岡山のニュース
  • 外来で「スクリーニング検査」始まる 岡山県事業で県内4病院 新生児の聴覚障害早期発見 里帰り出産も安心 費用は公費で半額補助

外来で「スクリーニング検査」始まる 岡山県事業で県内4病院 新生児の聴覚障害早期発見 里帰り出産も安心 費用は公費で半額補助

音に脳が正常に反応しているかどうか、外来のスクリーニング検査を受ける新生児=倉敷成人病センター

外来で新生児の聴覚スクリーニング検査を受けられる機関(表)

 1000人に1人か2人とされ、先天的な障害の中でも高率で現れる聴覚障害。岡山県は早期発見・療育を狙いに、2001年度から県内の産科医療機関で新生児を対象に障害の有無を調べるスクリーニング検査を実施しているが、県外で里帰り出産したり、検査器具のないところで産む人もいる。そうした検査漏れをなくそうと、8月から県内の4医療機関で外来によるスクリーニング検査を始めた。

 「はい、ちゃんと『パス』になりましたよ」

 倉敷市白楽町の倉敷成人病センター。赤ちゃんの耳に当てられたヘッドホンのような器具が外されると、母親の酒井理恵さん(23)=同市児島田の口=の顔が緩んだ。

 二十日前、長女のこころちゃんを助産院で出産した酒井さんは、聴覚障害の有無を調べるため、同センターを訪問。耳に音を当て、脳の反応を調べた。音を流し始めて三十秒。異常のない「パス」の判定に「大丈夫だとは思っていたけど、早めに確認できて安心しました」。

 外来スクリーニング検査は同センターのほか、岡山赤十字病院(岡山市青江)、岡山済生会総合病院(同市伊福町)、津山中央病院(津山市川崎)で八月から実施。いずれも、再検査率が低く精度が高いといわれる「自動ABR」という検査器具を導入している医療機関で、費用五千五百四十円のうち二千八百四十円が公費で補助される。

 新生児の聴覚検査は二〇〇一年度から国のモデル事業として岡山県が開始。現在、四十四の産科医療機関でスクリーニング検査を行い、異常があった場合は精密検査で詳しく調査し、確定すると療育機関へつなげる。

 全県的な検査体制により「全新生児の約75%がスクリーニングを受けている」(県健康対策課)が、検査器具のない機関で出産する場合もある。このため、どこで出産しても後で検査が受けられるよう外来で始めた。

 県では早期発見体制により、生後三カ月までに確定診断、六カ月までに療育につなげたい考え。療育が遅くなると、親子のコミュニケーションや言葉の発達などに悪影響が出てくるからだ。

 聴覚障害のある子どもへの療育を行っている「岡山かなりや学園」(岡山市西古松)の福田章一郎園長は「子どもは外から情報が入らない、親は反応がないので育児の自信がなくなる。双方にストレスがたまる」とコミュニケーションの「空白期間」を短くする必要性を指摘する。

 また、早期の療育は言語の発達にも効果がある。補聴器や人工内耳の進歩で、早期から取り組めば、発する言葉の明瞭(めいりょう)度が大きく変わってくるという。

 県健康対策課は、外来スクリーニング機関の一覧を母子健康手帳に挟んで渡したり、各保健所などで周知を図る方針。「検査率が100%に近づけるよう情報提供していきたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年08月23日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ