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災害時は国際基準で避難所運営を 倉敷市課題点検、医療従事者訴え

 西日本豪雨による倉敷市運営の避難所が全て閉鎖された。運営の課題を点検する中で、長く支援に当たってきた医療従事者から、避難所の国際基準「スフィア基準」の順守を求める声が出ている。避難者の衣食住について“最低限の基準”が定められており、被災後の体調悪化などで亡くなる災害関連死の防止に役立つという。

 ■ 人道的な観点

 スフィア基準は、アフリカの難民キャンプで多数の死者が出たのを受け、国際赤十字などが1998年にまとめた。避難者の滞在空間、給水、食料、衛生などの分野別に、人道的な観点から守るべき基準を示している。

 例えば、居住スペースは1人当たり、畳2畳分相当の3・5平方メートルを確保することを求めている。快適な温度や新鮮な空気、プライバシー保護などを考慮した数値だという。

 トイレなら避難者20人につき1基は設け、かつ個室は男女別の割合が1対3になるよう定めている。女性の方が多いのは、より時間がかかるのに配慮しているため。また生存に必要な水の量から、水道の蛇口の利用者数は一つ当たり250人までと制限している。

 ■ 寝返りも我慢

 今回の豪雨による倉敷市の避難所でも「収容能力の不足」は大きな課題となった。一時は約2千人が避難した真備町地区の岡田小など、避難所によっては収容力を超える被災者が押し寄せたため「寝返りを我慢するほど狭く、つらかった」との証言もある。密集を避けようと、健康悪化のリスクが高い車中泊を選んだ人もいた。

 NPO法人九州キリスト災害支援センター(福岡市)の看護師山中弓子さん(50)は「被災者の健康と尊厳を守るため、スフィア基準を守ってほしい」と訴える。

 山中さんは、阪神淡路大震災や熊本地震で支援に当たり、今年8月中旬から倉敷市の避難所で活動。「基準に照らせば『日本の避難所は難民キャンプ以下』との指摘もある。少しでも基準に近づけるよう、運営者の努力が必要」と話す。

 徳島県では、自治体向けの「避難所運営マニュアル作成指針」にスフィア基準を取り入れた。基準の理念や考え方を広めるため、支援者対象の研修会も開催。避難所の質向上に向けた取り組みが始まっている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2018年12月18日 更新)

タグ: 医療・話題

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