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「分子イメージング」技術 榎本・岡山大教授ら研究 患者負担かけず がん細胞“追跡”

マウスの分子イメージング画像。がんの発生部位が赤く見える

榎本秀一教授

 がん細胞の位置や体内に注射した薬剤の動きなどを生体を傷つけることなく三次元画像で映し出す「分子イメージング」技術の研究に、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の榎本秀一教授が取り組んでいる。新薬開発やがんの早期診断などにつながる技術として、世界的に注目を集める研究だ。


 分子イメージングは陽電子放射断層撮影装置(PET)などの特殊機器を使用する。追跡したいプローブという分子に放射性元素を付加して生物に投与。放出されたガンマ線を特殊機器がとらえ、分子の動きや位置などをリアルタイムで映像化する。

 榎本教授は北海道大大学院で薬学博士を取得後、理化学研究所(理研)に入り核医学分野で研究。2008年には複数のプローブを同時に追跡するカメラの開発に世界で初めて成功した。同年、岡山大に赴任、理研神戸研究所(神戸市)分子イメージング科学研究センターで研究ユニットのリーダーも務めている。

 岡山大では現在、医歯薬学総合研究科の宮地弘幸教授らが取り組んでいる、潰瘍(かいよう)性大腸炎やクローン病といった原因不明で治療が難しい腸疾患の治療薬開発に協力。これらの疾患患部に付着しやすいプローブを作り出し、分子イメージングで新薬候補物質の効き目を検証しているという。さまざまながんや動脈硬化、糖尿病の早期診断などにつながるプローブ開発も進める。

 榎本教授は、がん治療薬の研究開発を目指し岡山県内の産学官連携グループが11年までに岡山大鹿田キャンパス(岡山市北区鹿田町)に設ける「おかやまメディカルイノベーションセンター(OMIC)」にも中心的メンバーとして参画する。

 OMICには岡山大にはないPETなどの特殊機器が導入される予定で、榎本教授は「設備がそろえば研究はさらに加速する」と期待している。

 ただ、分子イメージング技術の研究は、政府の「事業仕分け」で国からの事業費が削られるなど理解されにくいのも事実。榎本教授は「世界的に競争が激しい分野。理研などと連携して世界一の技術水準を保ち、機運を岡山に根付かせるよう努めたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年01月13日 更新)

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