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(6)高齢発症の関節リウマチ 倉敷スイートホスピタルリウマチセンターリウマチ副センター長 高杉幸司

グラフ1

グラフ2

高杉幸司副センター長

 朝起きた時や、長く同じ姿勢でいたり、歩いたりした後に、膝、肩、肘、手、足、指などの関節が動きにくかったり、痛みや腫れを感じたりすることはないでしょうか。特に寒い時期はいっそう感じやすくなります。こうした場合、関節に炎症が起きている可能性があります。

 日本人の平均寿命が延びて高齢者が増えるにつれ、高齢発症の関節リウマチの患者さんが増加しています。日本老年学会・日本老年医学会は高齢者の定義を75歳以上とするよう提言しました。1992年と2002年を比較すると、高齢者の身体機能は約10歳若返っており、高齢者自身の意識の変化も踏まえての提言です。

 関節リウマチを対象とした多施設共同データベース(略称Ninja)によると、関節リウマチ患者さんの平均年齢は65・3歳で、男女とも年々高齢化しています(グラフ1参照)。75歳以上の人口割合は、2002年の10・4%から16年には25・4%に増加しています(グラフ2参照)。

 関節リウマチは高齢発症関節リウマチと若年発症関節リウマチに区分されます。高齢発症は一般に、若年発症と比較して男性の比率が高く、突然の発熱や多発性の関節炎が出現したり、血液検査で自己抗体(自分自身の成分に対する免疫反応で作られるタンパク質)がみられなかったりする患者さんが多いとされています。手や手指関節に加え、肩や膝などの大きい関節の関節炎が多いのが特徴と考えられます。

 高齢発症関節リウマチはリウマチ性多発筋痛症という病気と同様の症状を呈するため、診断に苦慮することがあります。そのため、問診、採血、レントゲン、特に関節エコーにより関節滑膜炎があることを確認し、慎重に鑑別診断を行います。治療を先行し、経過の中で確定診断に至る場合もあります。

 現在、関節リウマチにおいて必要といわれている「treat to target(目標達成に向けた治療)」という、疾患活動性を低疾患活動性あるいは寛解(痛みや腫れがほとんどない状態)に向けて治療していく考え方は、高齢発症関節リウマチにも当てはまります。

 その理由は、高齢発症関節リウマチは関節破壊の進行が若年発症と同等か、もしくはそれ以上に進みやすく、治療しにくいからです。高齢発症であれ、若年発症で高齢者になられた関節リウマチ患者さんであれ、高齢者はフレイルという虚弱状態(表参照)に陥りやすいのです。治療しなければ、身体機能の低下で寝たきりや施設入居になったり、褥瘡(じょくそう)(床ずれ)などを起こしたりするようになり、命にかかわる場合があります。

 しかも、高齢者は既に循環器疾患、脳卒中、慢性腎臓病、肺疾患などの持病を持っていることが多く、関節リウマチ治療の主軸であるメトトレキサートや生物学的製剤が十分に使用できない場合があります。

 このように、高齢になるほど個人差が大きく、高齢者の関節リウマチは一律の目標を設定することは難しいです。個々の患者さんが希望される治療内容や社会的背景(独居や老老介護、訪問診療の利用状況など)はさまざまです。高齢者の関節リウマチについて考えていくことは、高齢化の進む日本において非常に重要な問題だと思われます。

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 倉敷スイートホスピタル(086―463―7111)

 たかすぎ・こうじ 倉敷天城高校、岡山大学医学部卒。因島総合病院、国立病院機構岡山医療センター、岡山大学病院などを経て倉敷スイートホスピタル勤務。日本内科学会総合内科専門医、日本リウマチ学会専門医・指導医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年02月18日 更新)

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