大腸肛門治療でQOL維持 チクバ外科・胃腸科・肛門科病院(倉敷市林) 竹馬彰理事長・院長
―昨年11月に院長に就任され、理事長職と兼務されることになりました。
院長交代の大きな狙いは「世代交代」です。
当院は1972年、私の父、竹馬浩・現会長が病床数19の診療所として開設し、79年に増築・増床して病院になりました。2000年に院長職を瀧上隆夫・現名誉院長に譲った時、父は66歳でした。瀧上先生も昨年67歳を迎え、次の世代にバトンタッチするタイミングが来たというわけです。
現在、当院は岡山県南西部の患者さんを中心に、いぼ痔(じ)などの肛門手術を年間約1200件、早期大腸がんに対する粘膜切除術(EMR)などの内視鏡手術を約900件手掛け、消化管の内視鏡検査は約1万5千件に達しています。大腸肛門領域に特化した専門病院として、中国四国地方の基幹施設だと自負しています。
私は12年に理事長になり、今回、院長を兼任したことで、トップが一本化されました。さらにスピード感を持って病院運営に当たっていくつもりです。
少子高齢化を背景に日本の医療を取り巻く環境が目まぐるしく変わる中、当院が今後も地域医療に貢献し続けていくためには、世代交代によるリーダーの若返りが欠かせません。次の時代の病院は次の世代がつくっていく。私もその思いを胸に新たな人材を育成し、バトンをつないでいこうと考えています。
―17年の開設45周年を機に、病院施設のリニューアルを進めましたね。
老朽化に伴い、09年に全面建て替えを行った際には、もう増改築が必要にならないよう、各スペースに余裕を持たせたはずでした。ところが、内視鏡検査を中心に外来患者さんが予想の1・5倍超に増え、それに対応する職員も増員したため、あっという間に手狭になってしまいました。
そこで従来の病院棟の東側に管理棟機能を主にした3階建ての新棟を増築し、本棟を改装しました。
目的は二つあります。一つは診療サービスの向上です。以前は、混み具合によっては診察を待つ患者さんが座る場所がない、検査内容の説明を受けるスペースがないなど、ご迷惑をかけることがありました。今回、外来の待合スペースを分散・拡充し、少しでも心地よく待ち時間を過ごしてもらえるよう改善しました。
将来の稼働を見据えて内視鏡室も1室増やし、4室を備えました。瀧上名誉院長が内視鏡センター長に就任し、今後、内視鏡による検査や治療にこれまで以上に力を入れていきます。
もう一つは職場環境の改善です。患者さんに良質な医療を提供するには、職員が働きやすい環境を整備することが不可欠です。職員食堂を新設したほか、研修室やカンファレンス室なども増やし、職員同士がより円滑にコミュニケーションを図れるようにしました。職場への満足度を高めることで、新たな人材の確保にもつなげていければ良いと思っています。
―炎症性腸疾患(IBD)の患者さんが増えています。昨年11月に開設したIBDセンターでは、どんな治療を行っていますか。
消化管に慢性の炎症を引き起こすIBDは、潰瘍性大腸炎とクローン病に大別されます。どちらも国指定の難病です。発症のピークは20歳前後で若者に多いことが特徴です。
当院では以前より医師や薬剤師、看護師ら多職種によるIBDチームをつくって治療に取り組んできましたが、患者さんにより分かりやすいようにと、センターの名称を掲げることにしました。垂水研一副院長がセンター長です。
原因不明の難病ですが、近年は効果の高い治療薬が登場し、かつてのように手術や長期入院が必要な患者さんはぐっと減りました。それに伴い、病気を抱えながら進学や就職を希望する患者さんが増え、医療ソーシャルワーカーらが中心となってサポートしています。患者さんやご家族を対象に年3回、講習会を開き、医師が治療法を説明したり、療養に関する相談を受けたりしています。
IBD治療では、当院は岡山大学病院、川崎医科大学附属病院と並ぶ県内の拠点施設です。今後も患者さんの立場に立った医療を提供していきます。
―これからの診療ではどんな目標を掲げていかれますか。
ハード面の整備は一段落したので、診療体制のさらなる充実を図っていきます。
高齢になると、頑固な便秘、便やおならが漏れる、便通が不安定といった肛門機能の低下に悩む患者さんが増えます。こういった慢性症状に対し、嶋村廣視副院長を中心に診断や治療を強化していくつもりです。
例えば排便に問題を抱える患者さんの場合、肛門から細い管状のセンサーを入れ、肛門の締まり具合を測定する「直腸肛門内圧検査」を受けていただきます。その結果を踏まえて肛門括約筋のトレーニングに取り組むことにより、便をためる力や出す力が改善し、QOL(生活の質)の維持につながります。
開設から半世紀近くたち、患者さんや地域の皆さんから「お尻といえばチクバ」と、大きな信頼を寄せていただける病院になりました。これからもその信頼を裏切ることのないよう、地域の医療・介護機関とも連携を深め、職員一丸となって目標に向かって進んでいきます。
ちくば・あきら 倉敷天城高校、香川医科大学(現・香川大学医学部)卒。栃木県立がんセンター、恵佑会札幌病院を経て、1992年、チクバ外科・胃腸科・肛門科病院に勤務。2000年に副理事長。12年に理事長に就任し、昨年11月から院長を兼任する。日本大腸肛門病学会指導医、外科専門医、日本消化器内視鏡学会専門医など。56歳。
■チクバ外科・胃腸科・肛門科病院
倉敷市林2217
(電)086―485―1755
【診療科】肛門科、胃腸科、外科
【病床数】60
【ホームページ】http://www.chikubageka.jp
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。
院長交代の大きな狙いは「世代交代」です。
当院は1972年、私の父、竹馬浩・現会長が病床数19の診療所として開設し、79年に増築・増床して病院になりました。2000年に院長職を瀧上隆夫・現名誉院長に譲った時、父は66歳でした。瀧上先生も昨年67歳を迎え、次の世代にバトンタッチするタイミングが来たというわけです。
現在、当院は岡山県南西部の患者さんを中心に、いぼ痔(じ)などの肛門手術を年間約1200件、早期大腸がんに対する粘膜切除術(EMR)などの内視鏡手術を約900件手掛け、消化管の内視鏡検査は約1万5千件に達しています。大腸肛門領域に特化した専門病院として、中国四国地方の基幹施設だと自負しています。
私は12年に理事長になり、今回、院長を兼任したことで、トップが一本化されました。さらにスピード感を持って病院運営に当たっていくつもりです。
少子高齢化を背景に日本の医療を取り巻く環境が目まぐるしく変わる中、当院が今後も地域医療に貢献し続けていくためには、世代交代によるリーダーの若返りが欠かせません。次の時代の病院は次の世代がつくっていく。私もその思いを胸に新たな人材を育成し、バトンをつないでいこうと考えています。
―17年の開設45周年を機に、病院施設のリニューアルを進めましたね。
老朽化に伴い、09年に全面建て替えを行った際には、もう増改築が必要にならないよう、各スペースに余裕を持たせたはずでした。ところが、内視鏡検査を中心に外来患者さんが予想の1・5倍超に増え、それに対応する職員も増員したため、あっという間に手狭になってしまいました。
そこで従来の病院棟の東側に管理棟機能を主にした3階建ての新棟を増築し、本棟を改装しました。
目的は二つあります。一つは診療サービスの向上です。以前は、混み具合によっては診察を待つ患者さんが座る場所がない、検査内容の説明を受けるスペースがないなど、ご迷惑をかけることがありました。今回、外来の待合スペースを分散・拡充し、少しでも心地よく待ち時間を過ごしてもらえるよう改善しました。
将来の稼働を見据えて内視鏡室も1室増やし、4室を備えました。瀧上名誉院長が内視鏡センター長に就任し、今後、内視鏡による検査や治療にこれまで以上に力を入れていきます。
もう一つは職場環境の改善です。患者さんに良質な医療を提供するには、職員が働きやすい環境を整備することが不可欠です。職員食堂を新設したほか、研修室やカンファレンス室なども増やし、職員同士がより円滑にコミュニケーションを図れるようにしました。職場への満足度を高めることで、新たな人材の確保にもつなげていければ良いと思っています。
―炎症性腸疾患(IBD)の患者さんが増えています。昨年11月に開設したIBDセンターでは、どんな治療を行っていますか。
消化管に慢性の炎症を引き起こすIBDは、潰瘍性大腸炎とクローン病に大別されます。どちらも国指定の難病です。発症のピークは20歳前後で若者に多いことが特徴です。
当院では以前より医師や薬剤師、看護師ら多職種によるIBDチームをつくって治療に取り組んできましたが、患者さんにより分かりやすいようにと、センターの名称を掲げることにしました。垂水研一副院長がセンター長です。
原因不明の難病ですが、近年は効果の高い治療薬が登場し、かつてのように手術や長期入院が必要な患者さんはぐっと減りました。それに伴い、病気を抱えながら進学や就職を希望する患者さんが増え、医療ソーシャルワーカーらが中心となってサポートしています。患者さんやご家族を対象に年3回、講習会を開き、医師が治療法を説明したり、療養に関する相談を受けたりしています。
IBD治療では、当院は岡山大学病院、川崎医科大学附属病院と並ぶ県内の拠点施設です。今後も患者さんの立場に立った医療を提供していきます。
―これからの診療ではどんな目標を掲げていかれますか。
ハード面の整備は一段落したので、診療体制のさらなる充実を図っていきます。
高齢になると、頑固な便秘、便やおならが漏れる、便通が不安定といった肛門機能の低下に悩む患者さんが増えます。こういった慢性症状に対し、嶋村廣視副院長を中心に診断や治療を強化していくつもりです。
例えば排便に問題を抱える患者さんの場合、肛門から細い管状のセンサーを入れ、肛門の締まり具合を測定する「直腸肛門内圧検査」を受けていただきます。その結果を踏まえて肛門括約筋のトレーニングに取り組むことにより、便をためる力や出す力が改善し、QOL(生活の質)の維持につながります。
開設から半世紀近くたち、患者さんや地域の皆さんから「お尻といえばチクバ」と、大きな信頼を寄せていただける病院になりました。これからもその信頼を裏切ることのないよう、地域の医療・介護機関とも連携を深め、職員一丸となって目標に向かって進んでいきます。
ちくば・あきら 倉敷天城高校、香川医科大学(現・香川大学医学部)卒。栃木県立がんセンター、恵佑会札幌病院を経て、1992年、チクバ外科・胃腸科・肛門科病院に勤務。2000年に副理事長。12年に理事長に就任し、昨年11月から院長を兼任する。日本大腸肛門病学会指導医、外科専門医、日本消化器内視鏡学会専門医など。56歳。
■チクバ外科・胃腸科・肛門科病院
倉敷市林2217
(電)086―485―1755
【診療科】肛門科、胃腸科、外科
【病床数】60
【ホームページ】http://www.chikubageka.jp
(2019年03月18日 更新)
タグ:
消化器・肝臓・胆嚢・膵臓・おしり