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補聴器で快適生活 聞こえづらさ大幅改善  目的に合わせ選択、調整

福田さんと会話しながら補聴器の音の調節をする利用者(右)。声や物音など音の種類ごとに細かく調整できる

 19日は敬老の日。補聴器のプレゼントを考えている人も少なくないだろう。高性能のデジタル補聴器がここ数年普及し、日常生活での聞こえづらさは相当改善されているが、自分の難聴具合に気づいていなかったり、音の調整などが不十分なために使わず眠っているケースも多いという。快適に利用するには、専門家による継続的なカウンセリングが欠かせない。

 「大きい音はそのままで、小さい音を少し上げましょうか」

 岡山市鹿田町の岡山大病院。「話し声が聞きづらい」という七十一歳の女性の訴えに、言語聴覚士の福田章一郎さんがパソコン画面に映し出された数字を入力し直す。

 女性は難聴で、静かな場所での会話なら大丈夫だが、周囲がガヤガヤしていると内容が聞き取れなくなる。病院や市役所で何度も説明を求めたり、友人同士で集まっても会話の内容が聞き取れず生返事をすることが多かった。テレビドラマを見ていてもバックに音楽が流れると突然セリフが分からなくなる。

 今年一月に補聴器を購入。最初は音がこもって聞こえたが、岡山大病院に通って周波数や音量の微調整を続け、大幅に改善された。「今は補聴器を付けているのを忘れていることがある」と女性。補聴器の形状も耳穴に収まるタイプで、付けているかどうかほとんど分からない。

 国内の難聴者数は正確に把握されていないが、五百万人とも類推される。しかし、身体障害者として手帳が交付されるのは、重度の七〇デシベル以上で、実際は日常会話が聞き取りにくい四〇~五〇デシベル程度の人が相当数いると言われる。軽い難聴は福祉の対象にならないわけだ。

 また、それが加齢に伴って進む場合には症状に気づきにくい。健診体制から外れてゆき、発見も難しくなる。さらに、補聴器を買ってもきちんと調整しないで不快になり、使わなくなるケースも多いとみられる。

 「補聴器の便利さを実感するのが第一」と福田さん。「カウンセリングによって個々人の生活に合った音の調整を小まめにしていけば快適さが断然変わってくる」と強調する。

 補聴器は近年、従来のアナログ型からデジタル型に大きく転換。音の種類を細かく分類し、増幅に強弱を付けられる機能が充実したため、非常にきれいに聞き取れるようになっている。

 例えば、近くの声をよく拾うようにして、周囲の物音を抑えたり、周りで音がしていても、話し始めると小さくなるといった細かい調整も可能。以前のように音量を上げたら扉の開け閉めや通りの車の音まで同じように大きくなり、鼓膜が破れそうになる、ということも解消されたという。

 ただし、価格は一個(片耳)十五万~四十万円と決して安くはない。福田さんは「自分で判断して買うのではなく、耳鼻科医や言語聴覚士などにまず相談してほしい。その際、難聴の程度や耳の病気の有無、生活の中で必要とする場面を明確にすることが重要」とアドバイスしている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年09月17日 更新)

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