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風疹ワクチン・緊急対策開始 対象年代男性は受診を

 風疹のまん延を防止するための国を挙げた緊急対策(追加的対策)が今月スタートした。岡山県内でも、指定範囲の誕生日の男性(40~57歳)を対象に、市町村から無料受診券が送付され、抗体検査を受けた上で、必要があれば予防ワクチンの接種を受けることが求められる。なぜ特定の年代の男性が対象となり、どういう手続きで受診すればよいのだろうか。県などの対策担当者に取材した。

 今回の対策の対象者は1962年4月2日から79年4月1日生まれの男性。この年代が選ばれたのには理由がある。

 風疹の定期予防接種は77年に始まったが、当初は女子中学生のみが接種を受けた。妊婦が感染して胎児に重い障害を引き起こす先天性風疹症候群を防ぐことを優先したためだ。その後、男性にも接種すべきと考えられるようになり、さらに1回の接種では十分な抗体を維持できない人がいることも分かり、対象者や接種時期の見直しが重ねられてきた。

 現在は1歳児の時と小学校入学前の1年間の計2回接種することになっている。しかし、制度の変遷により、十分な抗体を持っている人の比率は年代によってばらつきがあるのが実態だ=表参照

 対策の対象となるのは1度も定期接種の機会がなかった男性たち。この年代の人たちが幼い頃、風疹はまだ身近な感染症で、一度かかったことがあれば抗体がつくられるため、約8割の人は今も抗体を維持している。しかし、残る2割の人は無防備な状態にある。

 対象より上の年代の男女も定期接種の機会はなかったが、何度も流行にさらされてきたため、大半の人が十分な抗体があると考えられている。

 風疹患者は昨年夏頃から増え始めているが、その中心は対策の対象年代で抗体のない男性とみられている。岡山県感染症情報センターによると、昨年1月から今年3月上旬までに県内で32人の風疹患者が報告された。31人は男性で、うち6割はこの年代に重なる40・50歳代だった=グラフ参照。全国的に同じ傾向で、1月には5年ぶりに埼玉県で先天性風疹症候群の発生が報告された。

 追加対策により、国は2020年7月までに対象者の抗体保有率を85%まで引き上げることを目指す。大きな目的は、東京五輪・パラリンピックの開催に伴い、多国籍の訪日客が入国して風疹がまん延するのを防ぐことだ。対策は21年度まで続け、保有率90%を最終的な目標にする。

 県健康推進課によると、対象者は三つの機会で受診することを想定している。(1)市町村と契約した医療機関に出向く(2)40歳から74歳の公的医療保険加入者に対する「特定健診」の実施機関で受診(3)職場で義務づけられている定期健診の実施機関で受診―のいずれかの機会に無料受診券を持参すればよい。

 ワクチン供給の調整もあり、初年度に受診券が送られるのは72年4月2日~79年4月1日生まれの男性に限られるが、それ以外の対象者も、希望すれば市町村から発行してもらうことができる。受診の際はまず抗体検査を受ける。十分な抗体がないと判定された人は、再び医療機関に出向いてワクチン接種を受けることになる。

 事務作業や予算措置が急ピッチで進められており、いつ受診券が送付されるかは市町村ごとに異なる。同課は「対象者は市町村の広報誌やホームページの案内に注意し、受診機会を逃さないように」と呼び掛けている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年04月02日 更新)

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