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岡山大病院 AIで薬剤師支援 質問に対応、全国初システム

AIによる回答が表示された画面(イメージ)

 岡山大病院(岡山市北区鹿田町)は、院内で蓄積した大量の情報を基に、人工知能(AI)が医薬品を巡る質問に答えるシステムを導入し、薬剤師の業務に役立てている。医師らから寄せられた専門的な問いをタブレット端末などに入力すれば、その場で答えが得られる。同病院によると、全国の病院で初の取り組みという。

 AIシステムは、「○×薬は腎機能の低下した患者に使えるか」「△と□を両方注射してもよいか」「胃ろうの人に錠剤をつぶして投与できるか」など薬の使用に関する幅広い質問に対応。タブレット端末やパソコンに文章形式で質問を打ち込むと、インターネットを介して、AIによる回答が「確信度(信頼度)」や関連する画像と一緒に表示される。

 同病院は2004年から、専属薬剤師を置く院内の薬品情報室が医師や看護師から電話で受けた質問と、専門書などで調べて対応した回答をデータベース化している。AIは、約8千件に上るこれらのQ&A事例や専門用語のほか、「塩モヒ(塩酸モルヒネ)」など現場で使われる略称も学習している。

 同病院では14年、約20の全病棟に薬剤師を配置してから現場で個々に医師らの質問を受ける場面が増加。経験の浅い若手薬剤師も増えており、知識をサポートしようと、AIサービスの研究・開発を手掛ける木村情報技術(佐賀県)に話を持ち掛け、共同でシステムを構築した。

 病棟の薬剤師全約30人に昨年4月、タブレット端末を配備し運用を開始。薬剤師は従来も薬品情報室のデータベースを検索できたが、キーワードの言い回しが多少でも異なれば求める情報に行き着かなかった。AIは文脈から意図を読み取るため、普段の話し言葉で入力しても的確に反応する。

 10月までの7カ月間で、IT機器の操作に慣れた若手を中心に延べ550件の利用があったという。「先輩の知恵が詰まっていて情報の信頼度が高い」「取り急ぎの時に便利」などの声が寄せられている。

 システムの開発や改良に携わってきた同病院薬剤部の神崎浩孝さんは「医師らへの正確な情報提供が、医療の安全確保や最適な薬物治療につながる。今後、音声入力や画面上で専門書の閲覧ができる機能を追加し、ベテラン薬剤師にも身近なツールとして浸透させたい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年04月25日 更新)

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