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妊産婦搬送、アプリで補助 岡山大開発 母子の情報素早く伝達

 岡山大の産科・婦人科学教室は、出産前後に体調が悪化した妊産婦の緊急搬送を、スマートフォンのアプリで補助するシステムを開発した。かかりつけの病院などから搬送先に素早く母子の情報を提供し、円滑な対応につなげる。お産を扱う岡山県内の全施設を対象に、5月7日から本格運用する。

 同大が、県内で分娩(ぶんべん)に対応できる全42施設(病院、診療所、助産所)にアプリを内蔵したスマホを配備。高度医療を担い、搬送先となる「周産期母子医療センター」(岡山大病院など6施設)には専用のタブレット端末を置く。

 胎盤が子宮から剥がれる「常位胎盤早期剥離」や産後大出血といった重篤なケースが生じた際、各施設は妊産婦の状態や分娩方法、投薬の状況などを統一のチェックシートに記入し、スマホアプリを起動してシートを撮影、送信。センターは、専用サーバーを介してタブレット端末で情報を受信し、患者を受け入れる。

 チェックシートは約1分で記入でき、紹介状代わりになる。岡山大病院が2017年以降、緊急性の高い7例で試行したところ、患者が到着してから赤ちゃんを取り上げるまでの平均時間は14分40秒と、従来に比べて約6分短縮。患者情報は一定期間が過ぎると自動消去されるなど、セキュリティー対策も整えている。

 現在、妊産婦の緊急搬送時の情報のやりとりには主にファクスを使っているが、岡山大の増山寿教授は「緊迫した状況で送信や情報伝達がスムーズにいかないケースもある」と指摘。同大は高度医療の迅速な提供を狙いにシステムを構築し、18年度からは運用費を含めて県の補助を年間約400万円受けている。

 西日本豪雨を踏まえ、システムには、災害時に自動で切り替わる「災害モード」も備えている。各施設がアプリで被災状況や患者の状態などを入力し、迅速な情報収集や対応に役立つという。

 開発に携わった同大の牧尉太助教は「今後、患者を搬送する救急隊と情報を共有する仕組みも構築し、周産期医療連携のモデルとして全国に発信したい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年04月30日 更新)

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