文字 

(1)プロローグ 増える心不全患者 岡山赤十字病院循環器内科部長 福家聡一郎

多職種の医療関係者が連携し、心臓病患者を支援する「岡山県医療連携パス」の会議=2019年4月、岡山赤十字病院

循環器センターが開設されている岡山赤十字病院

心臓病患者のリハビリに有効な運動習慣を身に付けてもらおうと開催された「第1回岡山ハートフルウオーキング」=2013年10月

福家聡一郎部長

斎藤博則部長

 岡山赤十字病院(岡山市北区青江)の循環器センターは、当院がまだ同丸の内に病院があったころの1979(昭和54)年8月に開設されました。岡山市内でも古参の心血管治療専門施設の一つです。

 開設当時は急性心筋梗塞の救急患者への緊急治療や集中治療が診療の中心でした。すでに40年になろうとしていますが、高齢化社会の到来や心不全患者の増加を受けて、その役割も変化してきています。

 日本の心不全患者数の正確な統計はありませんが、推計では2005年が約98万人で、その後も年々増加し、20年には120万人、30年には130万人に達するとされています。有病率は日本の人口の約1%に当たりますので、現在、岡山市内だけでも約7千人の心不全患者が存在する計算になります。

 この患者数を岡山市内にある急性期病院の循環器センター等を中心に診療するのでは対応しきれないのは明らかです。厚生労働省や岡山県では、心不全患者を地域全体で包括的に診療する方向性を打ち出しており、当院でも「おかやま安心ハートネット」と呼ばれる岡山県医療連携パスによるかかりつけ医との連携を重視し、心不全や急性心筋梗塞の包括的な診療を行っています。

 心不全は再発が多く、地域包括的な循環器診療や心臓リハビリテーションを実施することで、再発入院リスクの低下も期待されています。当院では、連携の窓口として「心不全地域連携パス外来」を開設していますし、分院機能を活用して玉野分院でも循環器外来を開設し、玉野市の方々にも好評です。

 今回から6回にわたる連載で当院循環器センターの機能を紹介していきます。

心臓リハビリテーションチームの活躍
医療社会事業部長兼循環器内科副部長 斎藤博則


 当院では24時間体制で心臓病の救急患者に対応し、緊急カテーテル手術を行っています。術後の患者にとって重要な事は再発予防であり、2008年から心臓リハビリテーションチームを発足させました。

 心臓リハビリテーションとは、狭心症、急性心筋梗塞、心不全、心臓手術後などの患者に対し、社会復帰や再発防止をめざした運動療法や生活習慣改善に取り組むプログラムであり、運動能力の向上だけではなく不安・抑うつの改善、死亡率や再入院率の低下など多くの点で有益であることがこれまで多数の研究で明らかにされています。

 チームは医師、看護師、理学療法士、臨床検査技師、薬剤師、心理士、管理栄養士、ソーシャルワーカー等の多職種により構成されています。そのうち専門的指導を情報共有しながら行えるよう「心臓リハビリテーション指導士」の資格を13人が取得しています。

 指導士メンバーを中心とした活動としては、2013年から岡山県が推進する急性心筋梗塞医療連携を開始、かかりつけ医との連携を図り、再発予防に必要な情報を提供できるよう取り組んできました。

 また心臓リハビリテーションの社会的認知度を向上させ、退院後にも継続的な運動ができる方法を提供するため、12年には市民フォーラムを開催、13年には当院が幹事で「第1回岡山ハートフルウオーキング」を開催しました。

 他院の患者さんも含め100人の心臓病患者が安全に運動できるよう、災害対応のプロである日本赤十字社岡山県支部の協力により無線、AED(自動体外式除細動器)、救急車両等を準備し、万全の体制で医療スタッフとともにノルディックウオーキングをしながら岡山市の操山公園や史跡散策をし、退院後にも運動を継続してもらえるような活動を行っています。

     ◇

 岡山赤十字病院(086―222―8811)

 ふけ・そういちろう 岡山大学医学部卒。岡山大学病院、国家公務員共済組合連合会高松病院、金田病院、岡山医療センターなどを経て、2009年4月から岡山赤十字病院勤務。日本心血管インターベンション治療学会認定医・専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会認定老年病専門医。医学博士。

 さいとう・ひろのり 東京慈恵会医科大学卒。東京医療センター、東京慈恵医科大学付属病院、神奈川県立厚木病院、岡山大学病院、岡山医療センターなどを経て、2005年7月から岡山赤十字病院勤務。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本心臓病学会心臓病上級臨床医(FJCC)、日本心臓リハビリテーション学会心臓リハビリテーション認定医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年06月03日 更新)

ページトップへ

ページトップへ