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がんの増殖や転移に自律神経関与 岡山大大学院教授らマウスで確認

神谷厚範教授

 岡山大大学院の神谷厚範教授(細胞生理学)らの研究グループは、自律神経ががん組織に入り込み、がんの増殖や転移に関与していることをマウスの実験で突き止めた。ストレスなどによる自律神経の乱れが、がんのリスクを高めていることを示唆しているという。自律神経の働きを制御する新たながん治療法の開発につながると期待される。9日、科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス」電子版に発表した。

 自律神経は交感神経と副交感神経からなり、脳からの命令を各臓器に伝え、臓器の働きを調節する役割を果たす。神経に着目したがん研究は珍しく、神谷教授は「自律神経の働きを操作する技術を応用すれば、“がん神経医療”という新分野を開ける可能性がある」と指摘する。

 グループはヒトの乳がん組織を観察し、がん細胞を取り巻くように交感神経が入り込んでいることを確認。交感神経の密度が高いほど、再発しやすいことも分かった。続いて、交感神経とがん増殖の関係を調べるため、乳がんを患わせたマウスで実験。遺伝子操作したウイルスを注射する独自開発の方法で交感神経を刺激すると、がんは60日後、何もしない状態の約2倍の大きさになり、他の臓器にも転移した。一方、交感神経をなくすと、がんは大きくならず、ほとんど転移もしなかった。

 神谷教授は「自律神経がどのように作用しているかや、乳がん以外のがんでも自律神経との関連があるかなどをより詳しく調べたい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年07月09日 更新)

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