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防げるか高齢者交通事故 川崎医療福祉大・金光義弘教授に聞く 身体機能の衰え把握を 運転継続は支援大切

金光義弘教授

 高齢者がかかわる交通事故が後を絶たない。岡山県内では昨年四千二百九十六件(人身事故)発生し、過去十年間で最悪。死者数は七十六人と、全体(百五十九人)の半数近く。県警は高齢者対策を最重点に、秋の交通安全県民運動(三十日まで)を進めている。事故の背景、防止対策は―。交通心理学が専門の金光義弘・川崎医療福祉大教授(65)は、高齢者自身が身体機能を把握し無理のない運転をすることと、家族、地域の支援の大切さを挙げる。

 ―高齢者の交通事故が後を絶たない。背景は。

 「高齢化社会の進行でシルバー世代が増えたからだが、それだけでは片付けられない。核家族化で高齢者との同居が少なく、家族が高齢者の身体機能の衰えを完全には把握していない。高齢者の運転や歩行の時に、誰かが付き添っていれば事故の可能性は低くなるのではないか」

 ―交通事故につながる身体機能の衰えは何か。

 「まず視覚。緑内障になると視野が狭くなる。通常は一二〇度とも言われるが、六〇度まで低下するケースもある。視野が狭くなれば危険の認識が遅れる。ピントがずれる白内障は、遠くの物の発見が遅れ距離感が分かりにくくなる。次に聴覚。スピード感をつかむエンジン音が聞き取りにくくなる。そして平衡感覚が鈍ることにより、ハンドルを切るときの操作がスムーズでなくなる」

 ―運転は高齢者にとってどのような心理的作用があるか。

 「日常生活をスムーズに送ることで『自分はできる』という自信につながる。『周囲が認めている』と思うこともプラス効果。これらが失われると、高齢者の活力がなくなる恐れがある。運転をやめさせるのではなく、長く運転できるようにすることが望ましい。運転が困難で免許返納を勧める場合は、自尊心を傷付けないよう配慮も必要」

 ―事故に遭わないため、高齢者に求められることは。

 「運転、歩行を問わず交通社会の一員としての自覚、身体機能の衰えの程度を把握することが大切になる。視野や反応の速さなど運転に関連する身体機能がチェックできる県警の交通安全体験車・おかやまふれ愛号は、自覚を促す上で効果があると思う」

 ―事故抑止へ家族や地域ができるサポートは。

 「機会を見つけて、車に同乗して運転状況を確かめること。同乗が難しい場合、事故に遭遇しそうになった『ヒヤリ・ハット』の出来事を高齢者から聞くことができるよう、普段からコミュニケーションを取ることが必要」

 ―サポートする上で、郡部に比べて人のつながりが希薄とされる都市部が課題となりそうだが。

 「都市部も小学校区を単位にサポートしていくことは可能。安全は交通だけに限らない。高齢者を災害時にどう守るかも安全に含まれる。高齢者の安全については多角的に考えてほしい」

 ―制度面で検討すべきことは。

 「米国の一部の州では、運転が困難と思われる高齢者を医師が行政側に通報する制度がある。行政側はその後、運転が可能かどうか検査する。日本でもこうした医師の関与は参考になる。七十歳以上を対象にした高齢者講習の充実も求められよう」


ズーム

 岡山県の高齢者交通事故 県警によると、2004年の全死者数は159人で65歳以上の高齢者は76人。40人が四輪、二輪、自転車のいずれかに乗車中だった。今年の全死者数(22日現在)は110人で高齢者は42人。県警は「高齢者対策が事故抑止の鍵」とし、交通安全体験車・おかやまふれ愛号での安全運転教育を実施。各署に配置された「シルバーセーフティーサポーター」による訪問啓発にも取り組む。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年09月24日 更新)

タグ: 健康高齢者

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