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満足を創造する医療目指す 岡山中央病院(岡山市北区伊島北町) 金重総一郎院長

金重総一郎院長

岡山中央病院の新棟イメージ図(右)

 ―病院が立ち上がったのは約70年前。歴史がありますね。

 1951年、岡山市北区奉還町に医院を開業したのが始まりで、56年に岡山中央病院に改称しました。泌尿器科と産婦人科でスタートし、透析治療の草創期である69年には専門のセンターを設け、透析患者の受け入れもスタートさせました。99年に現在の場所に新築移転してからは救急科にも力を入れています。現在は整形外科、脳神経外科なども加わり、地域における基幹病院としての役割を担っています。

 ―女性の医療に力を入れています。

 婦人科、泌尿器科、乳腺外来を一体的に運営する組織として「ウィミンズメディカルセンター」を立ち上げています。女性のこころとからだを総合的にとらえ、病気の治療や予防、健康増進まで取り組む組織です。女性に優しい医療の提供を実現させています。

 例えば泌尿器科には女性医師を配置し、子宮やぼうこう、直腸が膣(ちつ)から出てしまう「骨盤臓器脱」の治療に取り組んでいます。出産や加齢によって靱帯(じんたい)や骨盤底筋が緩むことで起こる疾患で、閉経後の女性に多くみられます。当院では腹腔鏡(ふくくうきょう)による最先端治療を行うだけでなく、手術支援ロボットを導入し、安全性も高めています。

 尿失禁に悩む中高年女性の治療も行っています。体操や薬物療法で効果がない場合などは手術も選択肢になります。これまでは「恥ずかしい」と受診せず、放置するケースは少なくありませんでした。婦人科が担当する病院もある中で、当院は専門の女性泌尿器科医が診療に当たっているのが強みです。安心して治療に専念できる体制を整えています。

 ―8月からは痛みがない新しい乳がん検診を始められました。

 MRI(磁気共鳴画像装置)による最新の画像診断技術・DWIBS(ドゥイブス)法を取り入れた検査です。乳房を板で挟んで撮影するマンモグラフィー(乳房エックス線検査)に比べ、痛みを感じないのが最大の特徴です。服を脱ぐこともないので、恥ずかしさもありません。うつぶせ姿勢で行い、15分程度で終わります。鮮明な画像で撮影でき、乳腺・乳房の状態もよく分かります。マンモグラフィーと比べてもそん色ありません。ただ撮影時のMRIの調整が非常に難しく、日本で実施している医療機関は少ないのが現状です。当院は第一人者である東海大の高原太郎教授の指導の下、万全の体制でスタートさせることができました。費用は全額自己負担となりますが、税込みで1万9580円です。乳がんを発症する人は非常に増え、中でも若年の患者さんが多いのが特徴です。これまで敬遠しがちだった方にもぜひ受けていただき、早期発見につなげていただきたいです。

 ―院長としてどんなことを気に掛けながら病院経営に当たっていますか。

 就任以降、スタッフに言っているのは「満足を創造する」です。患者の中には残念ながら病気が治らない人もいます。そうだとしても、少しでも満足して退院していただきたいという思いを持っています。そのために必要なのはコミュニケーションの充実です。私は放射線科医としてがん治療に当たってきました。初診の場合は基本的に30分以上時間を掛け、丁寧に説明しています。患者と長く接する看護師にも「つらい心に寄り添うことが大事」と常々伝えていますし、部屋をお掃除する職員、事務員にも「あなたたちの笑顔が患者さんの運命を変える」と話しています。「みんなでつくる医療」を合言葉に、職員一丸となって頑張っています。

 ―今後の病院の取り組みを教えてください。

 隣接する土地に、新棟を建設する計画を持っています。岡山中央奉還町病院(岡山市北区奉還町)が老朽化し、そこの機能を移す予定です。フロアの配置などは現在詳細を詰めているところですが、お産を担当する産婦人科を中心とした女性フロアやプライバシーに配慮した透析治療フロアを設けようと思っています。リハビリ病棟も新たに作ります。リハビリが十分でないのに退院しても、自宅での生活は困難になります。しっかり訓練を行い、動けるようになってから自宅に戻れるよう、患者目線に立った医療を提供していきます。

 高齢化が進行する中で、地域における基幹病院としての役割は今以上に大切になってきます。骨折や脳梗塞で動けない人も増えてくるでしょう。地域のかかりつけ医から気軽に紹介してもらえるよう、連携も強化していくつもりです。

 あくまでアイデアの段階ですが、かかりつけ医の先生方も10年後、20年後には高齢化し、診療所の維持も難しくなるケースが増えてくると思います。閉院してしまえば、住民にとってマイナスです。建物や設備の維持管理が難しければ、当院の診察室を定期的に使ってもらうというやり方もあるかなと考えています。今すぐにというわけではありませんが、地域における持続可能な医療の提供を考えていくことも私たちの役割だと考え、日々患者と向き合っています。

 かねしげ・そういちろう 川崎医科大医学部卒。京都大医学部付属病院、倉敷中央病院などを経て、2013年9月から岡山中央病院。放射線がん治療センター長、診療部長を務め、18年1月から現職。麻酔科標榜医、日本医学放射線学会放射線科認定医、日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医。41歳。

■社会医療法人 鴻仁会 岡山中央病院
 岡山市北区伊島北町6の3
 (電)086―252―3221
 【診療科】内科、外科、泌尿器科、産婦人科、循環器内科、整形外科、脳神経外科、放射線科、救急科など14科
 【病床数】162
 【ホームページ】https://www.kohjin.ne.jp/hospital/central/central.html
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年09月02日 更新)

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