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お医者さんになったよ! 川崎医科大「子ども教室」

鶏肉の一部を腫瘍に見立て、超音波メスを使って慎重に切除

災害が発生したとの想定で応急手当てを体験する参加者

今や救急医療に欠かせない存在となったドクターヘリ。親子でフライトナースの話に耳を傾けた

習ったばかりの心臓マッサージに挑戦。両手を使い、強い力で胸骨を圧迫する

 医療や福祉への関心を高めてもらおうと、川崎医科大(倉敷市松島)は8月20、21日、同大で「かわさき夏の子ども体験教室」を開いた。2009年から続く恒例行事で、岡山県内外の小中学生が災害現場を想定した救助体験に臨んだほか、実際の医療器具の操作にも挑戦した。体験の様子を写真で紹介する。

 体験教室は同じプログラムで2日間あり、希望する日を1日選択する。今年は小学1年生から中学3年生までの計約180人が参加した。広島や香川、大阪府など県外からも駆け付けた。

 取材した初日の参加者は約80人で、開講式の後、2班に分かれ、医療講演会を聴講した。小学5年生以上を対象にした「赤ちゃんのパワーを知ろう」では、産婦人科学の下屋浩一郎教授が登壇。平均体重や胎児の臓器が出来上がる期間などをクイズ形式で解説したほか、胎児の様子を立体的に表示できる4Dエコーを画像や動画で紹介した。指をしゃぶる様子などが鮮明に確認できると、子どもたちは感心した様子だった。

 引き続き、救急医療で活躍するドクターヘリや中央検査部、栄養部といった同大附属病院の各部門を見学しながら、親子で記念写真に納まったり、熱心にメモを取ったりしていた。

 午後からは体験がスタート。模型を使って人体のメカニズムを学ぶ「からだのしくみ」(小学1~4年)▽けがの手当てや心臓マッサージを施す「応急処置」(同3年以上)▽手術着姿で内視鏡の操作や腫瘍を切除する模擬手術に挑戦する「外科医」(同5年以上)▽注射器や包帯の扱い方を学ぶ「看護師」(同)―の4コースが用意された。

 「応急処置」コースは、子どもたちが同大救急医学の医師らから説明を聞いた後、救急隊、看護師、医師役に扮(ふん)し、がれきに見立てた段ボールが置かれた“災害現場”に急行。負傷者役の保護者を見つけると「どこか痛いところはありますか」「歩けますか」と声を掛けながら、けがの状態で治療の優先順位を決めるトリアージを行った。ガーゼを使った止血や、骨折した腕、足を添え木で固定する処置にも挑戦した。

 倉敷市立葦高小3年の平こころさん(8)は「患者さんから話を聞きながら判断するトリアージが難しかったけど、とても勉強になった。将来は医療関係の仕事に就きたい」と話していた。

 夏の子ども体験教室の企画・運営を初回から担う森谷卓也教授=病理学=と中村信彦課長は今年4月、文部科学大臣表彰(科学技術賞理解増進部門)を受賞した。同大によると、これまでの参加者約2550人の中から、75人程度が川崎学園の大学などに入学するなど医学教育の裾野拡大に一役買っている。同大は「より多くの子どもたちに医療への関心を持ってもらうため、来年度以降も充実したプログラムを企画したい」としている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年09月02日 更新)

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