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遺伝性がん患者の思い発信 当事者会、20年に岡山でパネル展

四国4県で展示したパネル作品を前に話し合う太宰さん(左)と岡山会場の参加者=8月、岡山大病院

 遺伝性の乳がんや卵巣がんの当事者でつくるNPO法人クラヴィスアルクス(東京)は、岡山県内や大阪、京都府などに住む患者による写真パネル展「遺伝性がん当事者からの手紙」を来年1月、岡山市内で開催する準備を進めている。本人の写真とともに、治療経過を振り返ったり、家族への感謝の気持ちをつづったりした文章を1枚に収めて展示し、患者の思いや悩みを社会に発信する。

 特定の遺伝子に病的変異があることでがんになりやすい「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」は、乳がん患者の3~5%、卵巣がんでは10~15%が該当するとされる。相談しようにも病気が知られていないため孤立する患者は多く、社会の理解を進めようと、パネル展を企画した。来年1月27日~2月7日、岡山大病院(岡山市北区鹿田町)で開く。

 パネル製作に取り組んでいるのは40~60代の女性5人と同病院臨床遺伝子診療科の医師、認定遺伝カウンセラーら。月1回のペースで同病院に集まり、手紙の執筆状況の報告や写真の構図を話し合っている。今月25日には岡山大の医学部生でつくる同大鹿田写真部による撮影に臨む。

 パネル展は昨年8~12月、愛媛県を皮切りに四国4県で初めて開催した。四国在住の当事者による「私は命のバトンをうけ、娘にバトンをつなぐ」といった直筆メッセージや、子供が胸に触れる写真に多くの共感が寄せられたという。

 岡山会場も同様の構成にする予定で、代表の太宰牧子さん(50)は「一人一人の経験を多くの人に知ってもらいたい」と話している。

 クラヴィスアルクスは2014年に設立。全国各地で当事者による交流会を企画し、岡山大病院では6月から毎月1回開いている。今月は25日午後2時から中央診療棟4階の多目的学習室。参加無料で申し込みが必要。

 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC) 遺伝子BRCA1またはBRCA2に病的変異があることで発症するがん。変異を持つのは400~500人に1人で、80歳までに乳がんを約7割、卵巣がんを約4割の確率で発症する。親から子に変異が受け継がれる可能性は50%。遺伝学的検査で変異が分かれば、将来のリスク低減を図るため、乳房切除や卵管卵巣を摘出する手術が選択肢に挙げられる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年09月13日 更新)

タグ: がん女性岡山大学病院

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