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小児医療精通 県内の中心的役割 国立病院機構岡山医療センター(岡山市北区田益)久保俊英院長

久保俊英院長

2018年3月に誕生した小児系マスコットキャラクター「さにーちゃん」と病棟スタッフら

 ―4月1日に院長に就任されました。

 医師、看護師、事務スタッフ合わせ、約1400人が働いています。まとめるのは大変ですが、リーダーシップを発揮しながら、地域の中核病院としての機能を高めたいと思っています。

 就任以降、力を入れているのが「職員満足度100%の病院を目指す」です。「岡山医療センターで治療してよかった」と思ってもらうには、職員自身がやりがいを持って働ける職場づくりが重要です。モットーは「明るく、楽しく、厳しく」。例えば職員同士のあいさつの徹底、会議は原則1時間内で終わらせるといった身近な事から始めています。

 ―病院の歴史を教えてください。

 1945年に陸軍病院から引き継ぎ、国立岡山病院としてスタートしました。当時は岡山市下伊福にあり、61年に同市南方に移転。今の場所に病院を建て替えたのは2001年です。組織的には04年に独立行政法人化し、国立病院機構岡山医療センターという名称になり現在に至っています。

 ―どんな医療を提供されていますか。

 国の方針に沿った政策医療(がん、心筋梗塞、脳卒中、成育医療など)の推進、地域医療への貢献を2本柱にしています。18年度の診療実績は、新規入院患者は延べ約1万6千人、ベッド稼働率は89・6%で、手術件数は6千件を超えました。外来は1日平均約760人が受診し、年間では延べ約18万人となっています。患者が多いのは周産期を含め小児や循環器、整形外科、呼吸器などです。

 ―小児医療が強い病院というイメージがあります。

 未熟児・新生児医療の発展に尽くした故山内逸郎先生(旧国立岡山病院名誉院長)の存在が大きいでしょう。1991年に世界保健機関(WHO)、国連児童基金(ユニセフ)から「赤ちゃんにやさしい病院」として先進国で初めて認定されました。小児外科の分野でも92年、当時医長だった青山興司名誉院長らが1歳男児に対する生体肝移植手術を行い、大学病院ではない一般病院として初めて成功させました。そうした一つ一つの取り組みが、当院の礎になっています。

 ―小児系医療の体制を教えてください。

 新生児科、小児科、小児外科で構成しています。医師は研修医を含め常時約30人が所属し、県内では最大規模の陣容です。

 新生児科は主に新生児集中治療室(NICU)で早産・低出生体重児の治療に当たっています。超低出生体重児(出生体重千グラム未満)の救命率は全国でもトップレベルを誇ります。岡山県から総合周産期母子医療センターに指定され、県内の周産期・新生児医療の中心的役割も担っています。

 小児科も専門分野が多岐にわたり、内分泌や神経、アレルギー・感染症、代謝、腎臓などあらゆる分野に精通し、患者は中四国一円から集まっています。

 ―院長自身も小児科のご出身ですね。

 以前、担当した小児患者が虐待を受けていることに気付き、保護につなげたケースがありました。以降、児童虐待撲滅をライフワークの一つに掲げています。医療者や行政関係者を集めた勉強会「岡山県児童虐待対策協議会」を立ち上げ、代表世話人を務めているのもその一環です。多くの子どもたちが受診する病院だけに、医師や看護師には単に症状を見るのではなく、「なぜ」「どうして」と疑問に思うことが大事だと伝えています。

 ―マスコットが子どもたちに人気です。

 2018年3月に小児系マスコットキャラクター「さにーちゃん」を誕生させました。全国から約40件の応募があり、審査の結果、当院の看護師による作品が選ばれました。顔は太陽がモチーフで、岡山医療センターのマークが入っています。白衣を着ているのは子どもたちに医師や看護師を身近に感じてもらおうという願いが込められています。イラストは小児科スタッフが身に着けるユニホームに取り入れているほか、お正月やこどもの日といった毎月作成する季節のポスターにも登場しています。製作した着ぐるみには看護師が入り、病棟で子どもたちと遊ぶ活動を展開しています。ゆくゆくは手術室まで付き添ったり、病室を定期的に訪問したりしていきたいです。

 ―今後はどんな医療に取り組んでいきますか。

 最先端の医療をしっかり提供していくことが重要だと思っています。がん患者の遺伝子を調べ最適な薬や治療法を選ぶ「がんゲノム医療」が注目されています。岡山大病院(岡山市北区鹿田町)は国から中核拠点病院に指定されており、当院が同病院の連携施設となるべく準備を進めているところです。

 原発事故の際、県内における被ばく医療の中核を担う「原子力災害拠点病院」の指定に向けた取り組みも加速させています。専門知識を持つ医師や看護師のほか、除染室や内部被ばく測定機器の設置などを進めています。

 地域医療の充実も大切です。当院は岡山市の北部に位置し「北のとりで」としての機能が求められています。住民が安心して暮らしていくためにどうしたらいいか。常にそのことを頭に置き、職員一丸となって前進していきます。

 くぼ・としひで 岡山大学医学部卒。岡山大学医学部付属病院、高知県立中央病院、国立岩国病院、岡山市立市民病院などを経て、2003年4月から岡山医療センター勤務。19年4月から現職。小児科専門医・指導医、肥満症専門医・指導医など。専門は成長障害で、1995年~97年に研究のため米国留学。61歳。岡山市出身。

■国立病院機構岡山医療センター

 岡山市北区田益1711の1
 (電)086―294―9911
 【診療科】内科、消化器内科、循環器内科、小児科、外科、心臓血管外科、産科、婦人科など28科
 【病床数】609床
 【ホームページ】http://okayamamc.jp/index.php
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年09月16日 更新)

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