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玉野市民、三井病院統合 21年4月、公立と民間で独法

玉野市立玉野市民病院

玉野三井病院

 玉野市の市立玉野市民病院(同市宇野)と玉野三井病院(同市玉)が2021年4月に経営統合し、地方独立行政法人の立ち上げで基本合意したことが18日、分かった。地方独立行政法人を新設して公立病院と民間病院を統合するのは岡山県内初で全国でも珍しい。人口減少社会を迎え、全国的に将来必要な病床数が減る見通しの中、両病院合わせた病床も100床以上減らす計画で、経営基盤を強化し地域医療の維持に努める。

 1952年開設の市民病院は赤字経営が続き、40億円超の累積赤字がある。市は経営改善のため、三井造船(現・三井E&Sホールディングス)の従業員医療を目的に1919年に開設した玉野三井病院と経営統合に向けた協議を2018年から進めており、同日の市議会厚生委員会で12日に合意したと報告した。

 県の「地域医療構想」では、県内の病床数は17年現在で2万3803床だが、人口減に伴って25年の必要病床数は2万174床と推計。医療需要の縮小で経営環境が厳しさを増す見通しに加え、医師不足や老朽施設の建て替えといった共通課題を抱えていた。

 計画素案では新病院を24年度に開院する予定。鉄筋6階延べ約1万5千平方メートルで、候補地は市総合文化センター跡地周辺など3カ所に絞っている。病床数は市民病院199床、玉野三井病院110床だが、約4割減の計190床規模とする。診療科目、スタッフ数などは今後決める。高齢化率が全国平均よりも高いという地域事情に合わせて訪問診療や訪問リハビリを展開し、救急医療にも力を入れて地域の中核病院を目指す。

 地方独立行政法人は、自治体の直営に比べて経営の自由度が格段に高まり、人事や予算で自律的、弾力的な運営が可能となる。これまでに独法化した病院の多くで、病院事業の収支状況を示す指標「医業収支比率」が改善しているという。

 市は15年、市民病院再建へ指定管理者制度の導入を検討したが、管理者に決まりかけた法人が辞退。16年に医療法人・平成博愛会(徳島市)と包括協定を結び、経営改善に努めている。

 岡山大大学院の浜田淳教授は「厚生労働省が効率的な医療提供を目指し、各地の病院の再編や統合を促す中、両病院の基本合意はモデル的な事例となる。公立と民間で組織運営が全く異なるにもかかわらず、話し合いを重ねれば合意に達することができるという点でも示唆に富み、今後の展開に注目したい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年09月19日 更新)

タグ: 医療・話題

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