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岡山県臓器バンク 苦境 寄付金減少で5期連続赤字

寄付への協力を呼び掛ける一文を入れた県臓器バンクの啓発ちらし

 今年で設立30周年を迎える公益財団法人岡山県臓器バンク(岡山市北区大元駅前)が厳しい運営を迫られている。寄付金の減少などで2014年度決算から5期連続の赤字となり、19年度も赤字が避けられない見通しだ。移植医療が一般的な医療となる中、社会の関心を高められるかが課題で、バンクは10月の臓器移植普及推進月間に合わせてPRを強めている。

 バンクは主に県から事業を受託し、臓器提供の意思表示カードの普及、保険証や運転免許証への意思表示の記載を促進。臓器移植に関する講演会・出前講座の開催、脳死時に臓器提供を検討する家族の相談に乗る移植コーディネーター業務も展開する。

 だが、財政状況は厳しい。寄付金の減少や金利低下による国債の運用益悪化で14年度以降、220万~420万円の赤字を計上。17年度に基本財産(1億500万円)を一部取り崩したが、18年度も1130万円の収入に対し支出は1450万円で320万円の赤字となった。それまで赤字を埋めてきた内部留保も18年度で底を突き、このまま赤字が続けば活動を縮小する事態も起き得るという。

 バンクの収入の柱は県からの支出金のほか、寄付金が大きかったが、400万円前後で推移していた寄付金は13年度から減り始め、18年度は42万円。19年度は新規事業もあり県支出金が前年度より約200万円多い900万円だが、寄付金は低調だといい、収支は290万円の赤字となる見込みだ。

 寄付金減少の背景についてバンクは「移植医療への関心低下が影響している」と分析する。10年度に施行された改正臓器移植法で家族の承諾があれば臓器提供できるようになり、脳死移植が増加。今年9月末現在、脳死ドナーは636人、移植を受けた患者は約2800人まで増えた。移植医療が珍しくなくなり、注目される機会が減っているという。

 バンクでは本年度、売り上げの一部が活動資金となる自動販売機の設置を医療機関や学校、企業に依頼しているほか、臓器提供の意思表示を呼び掛ける啓発ちらし1万枚に寄付への協力も求める一文を初めて盛り込んだ。県立図書館(岡山市)でも10月20日まで臓器移植やバンクの重要性を訴える初の展示を行っている。

 市田英文事務局長は「脳死移植が増えたとはいえ、全国で臓器提供を待つ登録患者は1万4千人を超え、全ての命を救える状況にはほど遠い。臓器移植への関心を高め、バンクの役割や重要性を周知したい」と話している。

 寄付などの問い合わせは県臓器バンク(086―226―0181)。

 県臓器バンク 1989年12月に心停止後の腎臓移植の普及、啓発を目的に腎臓提供者の登録業務を行う県腎臓バンクとして発足。97年の臓器移植法施行を受け、全国に先駆けて腎臓、心臓、肝臓、肺と、複数の臓器の移植を推進するバンクとなり、現在の名称に変更された。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年10月08日 更新)

タグ: 医療・話題

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