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大規模病院で「軽症」料金拡大 岡山県内で8病院 運用時間拡大も

時間外選定療養費の徴収を知らせる掲示板=倉敷中央病院

 夜間や土日などに救急外来を受診して軽症と診断された患者に対し、通常の医療費とは別に特別料金を徴収する大規模病院(一般病床200床以上)が岡山県内で増えている。倉敷中央病院(倉敷市)が本年度から導入するなど、全19病院のうち8病院。安易に医療機関にかかる「コンビニ受診」の抑止につなげる狙いで、既に導入済みの病院の中にも対象時間を延ばすところがあるなど、徴収の流れが拡大している。

 特別料金の名称は「時間外選定療養費」。24時間体制で救急患者を受け入れる医療機関を中心に全国的に導入され、県内の大規模病院では岡山大病院が1万千円、岡山赤十字病院、岡山済生会総合病院、岡山医療センター、岡山労災病院(以上岡山市)、倉敷中央病院(倉敷市)、津山中央病院(津山市)と小児(中学生以下)のみを対象とする川崎医科大付属病院(倉敷市)が各5500円を徴収している。

 4月15日に導入した倉敷中央病院では、4~7月の救急搬送以外の受診者が計約1万5千人と前年同期比9・2%減少した。福岡敏雄救命救急センター長は「しばらく様子を見ないと導入の影響かどうかは分からない」とした上で、「負担軽減につながってほしい」と期待を寄せる。

 平日夜間や休日に救急外来を訪れる患者の中には「日中は仕事がある」「夜間の方がすいている」といった自己都合で受診するケースも。先行して療養費を導入した病院では、これらのコンビニ受診に一定の抑止効果が出ているという。

 実際、2008年12月に県内で最初に徴収を始めた岡山赤十字病院は、18年度の救急外来受診者が約2万5千人となり、ピークだった05年度(約4万5千人)の半分近くにまで減った。導入当初3150円だった徴収額を10年9月から5250円に増額し、11年12月からは対象を小児にも広げるなど「取り組みが影響した」とする。

 導入済みの病院でも岡山済生会総合病院は、午後10時だった徴収開始を9月1日から午後5時15分に前倒しし、翌午前8時半までの対象時間を5時間近く拡大した。「救急外来の本来の目的は重症者の治療。より専念できれば」とし、医師の働き改革のために内科の当直体制も見直した。

 とはいえ、療養費の存在を知らずに訪れる患者はまだ後を絶たず、現場でトラブルが生じることも。各病院では患者への情報提供に取り組んでいるが、岡山赤十字病院の辻尚志院長は「制度の趣旨や目的を多くの皆さんに納得してもらうには行政による周知が必要では」と指摘する。

 川崎医科大総合医療センター(岡山市)は「コンビニ受診が増えるようであれば、徴収を考えなければいけない」とするなど、今後、導入病院が増える可能性もある。一方、岡山市立市民病院の松本健五院長は「歩いて受診する患者が重大な病気を抱えているケースもある」とし、導入予定はないとしている。



 時間外選定療養費 平日夜間や土日祝日などに救急外来を訪れた軽症患者が徴収の対象。入院が必要だったり、他の医療機関の紹介状を持参したりした場合などは適用されない。金額は医療機関が自由に決めることができる。厚生労働省中国四国厚生局によると、県内ではベッド数200床以上の8病院を含む14医療機関が導入している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年10月25日 更新)

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