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1 乳幼児の腹痛 命にかかわる病気も

 子どもが急な病気になったり、けがをしたとき、どう対応すべきだろうか。治療が遅れると死に至るケースもある。発熱、やけど…身近な症例を挙げ、岡山県内の小児科、小児外科医らに症状、対処法などを解説してもらう。

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 元気に遊んでいた一歳三カ月の男児が昼すぎ、急におなかが痛い様子で泣き出しました。治ったと思ったら五~十分後にまた痛がり、昼食べた物を吐きました。その後、一時良くなったものの完全には治まらず、徐々に悪化したようです。便秘かもしれないと、かん腸をしたところ、血の混ざった赤い便が出ました。母親は慌てて、病院の救急外来を受診しました。

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 お母さんが病院へ急行したのは、大変よい判断でした。この男の子は、手遅れになれば生命にかかわる病気でした。

 病名は、口側の腸管が肛門側の腸管の中にもぐり込む腸 重積 ( じゅうせき ) 症。生後六カ月~一歳六カ月ごろに発症します。入り込んだ腸管が締め付けられて腹痛が起き、そこがふさがったため吐いたわけです。放っておくと血流が悪くなって腸管が腐り、死ぬ恐れがあります。

 幸い早く受診されたので、肛門から生理的食塩水を注入して圧力をかけ元の状態に戻しました。この病気は早期に治療すると、こうして90%程度は治りますが、発見が遅れれば手術となります。

 乳幼児の腹痛を考えるとき、急に起きたか、以前から続く下痢などを伴ったものかがポイントです。圧倒的に多いのが、下痢を伴う胃腸炎。大半はウイルス性感染症で心配ありません。このほか便秘や、発熱を伴う場合は尿路感染症、肺炎も考えられます。

 発熱がなく下痢だけが起きる胃腸炎では、脱水症状が心配です。水分補給に塩分が適量入ったスポーツ飲料を飲ませ、様子を見てください。便秘が疑われれば、かん腸をするのも有効策です。

 最も警戒が必要なのは、急に発症する腸管循環障害。今回の腸重積症、腸がねじれる腸 捻転 ( ねんてん ) 、かんとんヘルニア(脱腸)などがあります。

 腹痛にはまれに死を招く病気もあり、早期発見が欠かせません。一歳以上になると、泣いたり言葉で腹痛を訴えますが、一歳未満では話せず、激しく痛むときは泣かずに顔が青ざめてぐったりします。異変を大人が察知することが重要です。

 もし腹痛が起きたら、二時間程度、経過を見て、良くならなかったり、次第に痛みが強くなる場合は病院へ急いでください。特に前触れの症状がなく、しかも下痢のように腹痛を起こす明らかな原因がないときは要注意です。全身状態がよいときはスポーツ飲料などを飲ませ、翌日に受診しましょう。

(青山興司・岡山医療センター院長)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年10月08日 更新)

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