文字 

アトピー 生活習慣見直し重要 岡山赤十字病院 妹尾明美・皮膚科兼形成外科部長に聞く

「アトピー性皮膚炎の場合は寝不足を避けるなど、健康的で低刺激の生活を心がけましょう」と話す岡山赤十字病院の妹尾明美・皮膚科兼形成外科部長

 11月12日は「いいひふ」にちなむ「皮膚の日」。日本臨床皮膚科医会岡山県支部は23日、岡山市で市民公開講座「みんなで学ぶ皮膚の病気」を開き、大切な皮膚の健康を考えるよう呼び掛ける。座長を務める岡山赤十字病院(岡山市北区青江)の妹尾明美・皮膚科兼形成外科部長に、メインテーマとなるアトピー性皮膚炎、食物アレルギーについて、原因や対処法などを尋ねた。

 ―アトピー性皮膚炎などの原因になるアレルギーの仕組みについて教えてください。

 アレルギーはI~IV型の四つに分けられます。じんましんや花粉症、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎などはI型に分類され、免疫に関係するIgE抗体を介した、外界からの異物に対する過敏反応とされます。アレルギー反応を起こす原因物質をアレルゲンといい、食物や花粉、ダニ、カビなどいろいろなものがアレルゲンになり得ます。

 IgE抗体は皮膚や血液中の肥満細胞とくっついています。口や鼻の気道や粘膜、皮膚から侵入したアレルゲンがIgE抗体と結合すると、かゆみやさまざまなアレルギー症状を発生させるヒスタミンなどの化学物質が肥満細胞から放出されます。

 ―アトピー性皮膚炎はどのような疾患でしょうか。

 一言で言えば皮膚のバリア障害です。皮膚は外界と体内を分ける境界の役目を担っていますが、そのバリアが機能的に障害されていると考えられています。障害された皮膚からダニなどのアレルゲンが侵入して、かゆみや炎症などを引き起こします。

 原因の一つとして、皮膚の天然保湿因子であるフィラグリン遺伝子の異常が挙げられます。フィラグリンは表皮細胞の中にある繊維のような物質で、細胞同士を結びつける役割をしています。そこに障害があるため、レンガのように積み重なっている表皮細胞が崩れ、バリア機能を失ってしまうのです。

 ―アトピー性皮膚炎と食物アレルギーには関係があるのでしょうか。

 アトピー性皮膚炎の原因は不明な部分が多いものの、遺伝的な素因の上に皮膚のバリア障害があり、そこにダニや食物などのアレルゲン、または乾燥や汗などの環境的な素因が加わって皮膚症状を呈します。一方、食物アレルギーは小麦や卵、牛乳など特定の食物でアレルギー反応が起こり、じんましんやおう吐、下痢などの症状が出ます。

 アトピーの患者さんは卵や小麦などを食べると皮膚症状が出る場合が多いので、食物がアトピーの原因では、と考えられていた時期もありましたが、今、その説は否定的です。食物アレルギーはアトピーの皮疹の悪化には関与していますが、その発生には関わっていません。

 ―最近、食物が原因の口腔(こうくう)アレルギー症候群(OAS)の患者が大人を中心に増えていると聞きます。

 OASは花粉症と密に関係しています。スギやヒノキの花粉症の方はトマトを食べた時、ハンノキやシラカバの場合はリンゴや桃を食べると、喉に違和感が出たり唇が腫れたりといったアレルギー反応が出てしまいます。これらの花粉と野菜、果物のアレルゲンの構造がとてもよく似ているので症状が出るのです。

 口の中だけにとどまらず、全身にかゆみやじんましんが出ることもあります。呼吸が苦しくなったり血圧が低下したりして、アナフィラキシーショックの状態になると危険ですので、すぐに救急車を呼んでください。

 ―対処方法を教えてください。

 アトピー性皮膚炎の場合はスキンケア、薬物療法、環境対策の三つが治療の基本です。まずは掃除をしっかりして、ダニの少ない環境を整えることです。ストレスのある生活を避け、睡眠を十分とるなど生活習慣を見直すことも重要です。皮膚を清潔にして、保湿剤などで潤いのある肌を保ってください。

 燃え盛る状態の皮膚にはステロイド軟膏(なんこう)を適宜、じょうずに塗ること。中等症以上に対しては免疫抑制剤の治療があります。アトピー発症に関わるサイトカインという物質を抑える注射薬・デュピクセントも出ています。

 OASでは、アレルゲンを避けることが基本です。桃やキウイ、セロリなど、おかしいと思ったら食べないこと。詳しくは専門の医療機関を受診してください。血液検査や皮膚の反応テストなどを行い、どんな食物がどの程度危険なのかを知り、回避することが大切です。

23日、公開講座と相談会 三木記念ホール

 市民公開講座は23日午前10時半~11時半、岡山市北区駅元町の岡山県医師会館三木記念ホールで開かれる。

 「アトピー性皮膚炎の治療を正しく知ろう」をテーマに、岡山大学皮膚科の森実真教授が、日ごろの肌の手入れや最先端の治療法などについて講演する。終了後、皮膚病についての無料相談会も行う(受け付けは午前11時半まで)。

 無料。申し込み不要。定員300人。問い合わせは日本臨床皮膚科医会岡山県支部(090―5707―3271、平日の午前9時~午後5時)。

 せのお・あけみ 東京女子医科大学卒。岡山大学付属病院、三豊総合病院を経て2018年4月から岡山赤十字病院皮膚科兼形成外科部長。日本皮膚科学会皮膚科専門医、日本皮膚科学会認定研究施設指導医。医学博士。岡山大学医学部医学科臨床教授。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年11月18日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ