文字 

(3)泌尿器科の診察―検尿と超音波検査 岡山ろうさい病院副院長 泌尿器科部長 那須良次

那須良次副院長

 ■尿検査(検尿)

 医学の父と呼ばれている古代ギリシアの医師ヒポクラテス(紀元前460~377年頃)も「血尿の時には膀胱(ぼうこう)に潰瘍がある」「尿に砂が混じっていると結石がある」と記述しています。中世ヨーロッパでは尿を見て病気を診断するウロスコピストと呼ばれる専門家がいました=図1。尿を光にかざして、色、混濁、浮遊物、においなどから病気を推察していました。今でも尿の観察は泌尿器科診察の第一歩です。

 検尿は尿を採取するだけの侵襲の全くない検査で、腎・泌尿器科疾患のスクリーニング検査として非常に重要です。日本では学校健診、母子健診、職場健診、住民健診などに検尿が組み込まれており、公的な支援のもと、ほとんどの国民が検査を受けることができる世界でも類を見ない優れた健康診断のシステムが確立されています。

 人間ドックでも必ず検尿はあります。検尿で血尿などの異常が見つかった場合は早めに泌尿器科を受診してください。

 ■超音波検査(エコー検査)

 超音波検査=図2=は体表にプローブを当てるだけで体内の様子をリアルタイムで観察できます。心臓の動き、肝臓や甲状腺を観察して生活習慣病や腫瘍の早期発見など医療の幅広い領域で活用されています。

 エックス線検査とは異なり、放射線被ばくの心配がなく、子供や妊娠している女性でも検査が可能です。何度でも繰り返して検査を受けることができます。特別な設備も不要で、診察室や病室のベッドサイドでも簡単に検査ができます。

 泌尿器科では主に腎臓、膀胱、前立腺の診察に使用します。内科医が聴診器を当てるように、われわれ泌尿器科医は超音波プローブを体に当てて腎臓の形や大きさ、腫瘍などを確認します=図3

 膀胱の腫瘍や結石を探す場合には少し尿を我慢してもらって検査します。前立腺の大きさや尿の残り具合(残尿)を調べ、前立腺肥大症の診断に役立てます。最近は健康診断や人間ドック、かかりつけ医の超音波検査で腎臓や膀胱の腫瘍、前立腺の異常を指摘され、泌尿器科を受診する方も増えてきました。表のような病気が見つかることがあります。

 泌尿器科の診察は検尿と超音波検査が基本になります。どちらも痛みを伴わない検査で、必要に応じて何度でも繰り返し行うことができます。尿のことで心配があれば、気軽にお近くの泌尿器科を受診してください。

     ◇

 岡山ろうさい病院(086―262―0131)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年11月18日 更新)

ページトップへ

ページトップへ