文字 

4 学童の発熱 悪性の病気のことも

 昨日まで元気に小学校に通っていた十一歳の男の子が急に三八・五度の熱が出てきて、のどが痛くなり、そのうち右のひざを痛がるようになりました。翌朝、熱は下がったので湿布をしながら学校に行き、授業を受けました。午後になり、また三九度の熱が出たため早退しました。帰宅後もひざの痛みと腫れが続き、他の関節も痛がるようになりました。母親は翌朝、男の子を連れて病院の小児科外来を受診しました。

   ◇   ◇

 男の子はお母さんと病院に行き、熱があること、そして関節が痛くて腫れていることを話しました。そこで診察をすると、両ひざの関節が腫れ上がり、曲げるのも不自由なようでした。肝臓と 脾臓 ( ひぞう ) も腫れていました。血液検査の結果とレントゲン写真から、診断は小児の関節リウマチでした。

 小児の関節リウマチは関節が炎症を起こす関節炎型と、高熱が持続し多臓器(肝臓や心臓、血管など)の障害を伴う全身型に分かれます。この男の子はその後も高熱が約二週間続き、症状の重い全身型と分かりました。

 この病気は、炎症のときに血液に出てくるサイトカインと呼ばれるタンパク質が病気を悪化させることが分かっています。そのため、このサイトカインを抑える免疫抑制剤(ステロイド)を使い、治療を始めて数日後、熱が下がりはじめ、肝臓や関節の腫れもとれて元気になりました。現在、少量の免疫抑制剤を使うだけで普通の学校生活を続けています。

 学童や中学生は、本人が発熱などの症状をきちんと言わないことが多く、しばしば診断が遅れることがあります。このお子さんの場合、早めに関節の腫れと痛みを訴えたため、入院治療が順調に進みました。しかし、もう少し遅れると前述のサイトカインが体に大きな障害を与え、心膜炎や貧血や血小板の減少など重い症状が出てきた可能性があります。

 この年代の発熱の頻度は、乳幼児に比べると比較的少ないのですが、症状によっては熱の裏に悪性の病気が隠れていることもあります。同じような症状で、白血病など血液悪性 腫瘍 ( しゅよう ) が発病することもよくあります。細菌による関節炎でも発熱と関節の痛みを訴えることもあります。

 大きな子ども、特に男の子は熱が出る、体のどこかが痛いなどの症状をひどくなるまで言わないことがあります。普段と違う子どもの症状に注意を払い、高熱が出たとき他の症状がないかどうか詳しく聞きましょう。受診の目安として、高熱(三九度以上)が出た場合に一日様子を見て、高熱が二日以上続くようなら受診しましょう。特に四、五日以上続く場合は、その原因を詳しく調べる必要があります。

 また、このケースは大丈夫でしたが、お子さんが大きくなるとしばしば大人用の解熱剤などの置き薬を使うことがあります。中には子どもでは使えない薬もありますので、安易に大人用の薬を体が大きいからといって使うことは避けてください。

 (森島恒雄・岡山大小児科教授)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年11月05日 更新)

カテゴリー

ページトップへ

ページトップへ