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10 やけど 速やかに冷やすこと重要

 二歳の子どもですが、先日石油ストーブの上のやかんを手で触ってしまいました。幸い、あまり熱くなかったので痛がりもせず、手のひらが少しだけ赤くなる程度でした。家にある軟こうを塗って様子をみていると、水ぶくれにもならず治ってしまいました。このケースは大事に至りませんでしたが、程度によっては受診が必要な場合もあります。よく質問を受ける、やけどの応急処置などについて紹介します。

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 手のひらは外傷に対して丈夫な部位です。今回は水ぶくれ(水泡形成)もなかったので、自宅で安全に様子が見られたと思います。ただ、水泡形成が広範に生じると医療機関への受診が必要になりますが、軟こう塗布は医療機関での処置の邪魔になります。何も塗らない方がもっと良かったと思います。

 熱傷は三段階に分類されます。水泡もできないものは軽度(Ⅰ度)熱傷であり、一週間以内に完治します。水泡のできるものや薄皮のはがれるものが中等度(Ⅱ度)熱傷であり、毛穴や汗腺の深さの皮膚も傷害されるものは高度(Ⅲ度)熱傷です。

 Ⅲ度熱傷では知覚神経も傷害されるので、痛みも感じなくなることがあります。また、熱による変化で受傷翌日になり水泡形成が生じることもあるので注意してください。

 家庭で多いのは熱湯や油などの液体による熱傷と、熱い金属(やかん、ストーブやアイロンなど)に接触しての熱傷です。今回は、こういった家庭内で起きた熱傷の応急処置について説明します。

 熱傷は文字通り、熱によって生じる障害です。従って、熱を取る(冷やす)ことが一番の治療です。患部を一〇~二〇度の水道水で十~二十分間以上冷やすだけで、受傷後起きる病的変化を予防・軽減できます。水道水があてられない部位は、保冷剤をタオルで一重に巻いてから患部に当ててください(直接当てると冷やし過ぎになります)。小さいお子さんの場合は、冷やし過ぎると低体温になることがありますので、体温管理には注意をしてください。

 冷やすと痛みもとれますから、速やかに受傷部分を冷やすことが一番重要です。着衣が張り付いて脱がせにくければ、はさみで服を切り開きながら脱がせてください。水泡にならない程度の熱傷はそのまま様子を見て構いません。

 Ⅱ度熱傷の場合、受傷した面積が手のひらの五分の一以下ぐらいの小さなものであれば家庭でも様子が見られますが、これ以上の面積のものやⅢ度熱傷が疑われる場合には医療機関を受診した方が安全でしょう。

 創部は毎日水道水で洗ってください(消毒は不要)。また、創部保護の目的で創部はガーゼで覆うほうが賢明です。水泡が破れると痛みが増悪することがあり、最近は創傷保護剤を積極的に使用する医療機関も増えてきました。

 熱傷は予防が一番です。小さいお子さんのいる家庭では、ストーブに柵をつける、高い場所にお湯を置かない、テーブルクロスは使用しない、などの安全策をしっかりと検討してください。また、熱傷を起こしたとしても、慌てることなく落ち着いて対応することも肝心です。

 (後藤隆文・岡山医療センター小児外科医長)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年12月17日 更新)

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