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(3)周術期管理チーム 倉敷中央病院統括看護師長手術センター・血管造影室担当 山本千恵、手術看護認定看護師 西原明子

手術の説明や問診の際、PMT看護師は患者の不安が軽減できるような雰囲気づくりを心がけている

山本千恵統括看護師長

西原明子手術看護認定看護師

 手術や麻酔は、心身への影響が大きな治療法です。昨今、ロボット手術に代表されるような手術技術の進歩により、超高齢者や持病のある方々(ハイリスク手術患者)が手術を受けられる機会が増えました。また、入院期間の短縮が進み、多くの方は手術前日や手術当日に入院します。安全に手術を受け、合併症なく予定通りに退院するためには、手術が決定した外来の時点から十分に手術準備を行うことが必要です。

 当院では、患者さん個々の問題点を入院前に把握し、解決に向け複数の専門職種がチームを組み、介入しています。安全に手術を受け、予定通りの入院日程で地域社会へお戻りいただくため、2012年に周術期管理チーム(PMT=perioperative management team)を立ち上げました。現在、1カ月に約240人の患者さんに対し、手術決定時から手術に向けた心身の準備を行っています。

 PMTで行う術前外来では、手術を熟知した手術室看護師を中心としたPMT看護師が、手術に関する説明と問診、身体診査で全身状態のスクリーニングを行い、麻酔科医師が最終チェックをしてリスク回避に努めています。また、薬剤師は手術前に中止が必要な薬剤の確認と服薬や休薬の指導、栄養士は栄養指導を行います。

 全身状態のスクリーニングでは、手術、麻酔に影響すると思われる既往歴や検査データ、診断画像、心電図、アレルギーの有無をチェックします。手術方法による体位や時間を考慮し、身体疼痛(とうつう)や関節可動域、皮膚状態を確認します。スクリーニングした内容をもとに、周術期におけるリスクを予測し手術計画を立てます。具体的には、患者さん個々の問題解決に向けて、循環器内科や歯科等への紹介、褥瘡(じょくそう)対策サポートチームや糖尿病サポートチーム、ソーシャルワーカー等と連携し必要な準備をします。

 また、手術前の身体状態を整えるために生活習慣の改善が必要な場合には、生活習慣やキーパーソン、サポートシステムを把握し、患者さんが主体的に禁煙・節酒・口腔(こうくう)ケア・疼痛コントロールに取り組めるよう支援を行います。

 手術が決定した患者さんの心情に寄り添い、不安の軽減や意思決定の支援を行うことも、PMT看護師の重要な役割です。PMTで集約した情報は、患者さんに関わる医療スタッフ全員で共有し、問題解決に向けて継続して取り組みます。

 これらの取り組みにより、手術直前に手術延期になるケースの減少や、在院日数の適正化、合併症予防といった成果が得られています。また、十分な意思決定を経て手術に臨み、早期から退院支援を受けることが可能となります。患者さんやご家族から「手術をイメージして準備できる」「話を聴いてもらって気持ちが落ち着いた」といった評価を得ています。

 PMTは、患者さんが術後どのような生活に戻るのかを見据え、外来時点から関わり、手術室、病棟、地域へとつないでいく医療チームの核となって活動しています。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 やまもと・ちえ 広島県立大門高、佛教大学社会学科、倉敷中央看護専門学校、日本看護協会看護研修学校研修学科教育専攻卒。現在は倉敷中央病院統括看護師長(手術センター・血管造影室担当)。日本手術看護学会理事、日本手術看護学会中国地区会長。

 にしはら・あきこ 倉敷古城池高、倉敷中央看護専門学校卒、東京女子医科大学看護学部認定看護師教育センター修了。現在は倉敷中央病院血管造影室勤務。手術看護認定看護師。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年12月02日 更新)

タグ: 倉敷中央病院

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