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インフル、小児のゾフルーザ慎重に 今季の特徴や注意点は?

「インフルエンザの予防は、人混みを避け、手洗いとうがいをしっかりと」と呼び掛ける岡山医療センター小児科の古城真秀子医長

 今年もインフルエンザの流行期がやってきた。子どものインフルエンザ患者を多く診る国立病院機構岡山医療センター(岡山市北区田益)の古城真秀子小児科医長に、今季のインフルの特徴や注意すべき点を聞いた。

     ◇

 ―現在、検出されているウイルスはほとんどがA型のpdm09です。2009年に確認され、国内でも大流行となりましたね。

 このタイプの特徴は肺炎になりやすいこと。免疫力が弱っている高齢者、小児、糖尿病や慢性呼吸器疾患などの基礎疾患がある人は要注意です。子どもではインフルエンザの初感染となる場合が多く、急激な発熱と咳、鼻水に襲われます。

 数は少ないものの、子どもにとって怖いのはインフルエンザ脳症です。主な症状は激しいけいれんと意識障害、意味不明の言動など。命の危険性に加え、手足のまひや知的障害などの後遺症が生じることがあります。安易な解熱剤の使用は注意が必要で、脳症がより重症化する場合があるので、かかりつけ医に相談してください。

 ―どういった予防法が効果的でしょうか。

 基本的には、外出先から帰ってきたときなどに手洗いとうがいをしっかりすることです。手に付着していたり、空気中に漂っていたりするウイルスを口や鼻から吸い込んでしまうと感染します。その感染経路を妨害することが重要です。

 今季用意されているワクチンは、pdm09を含めA型とB型の2種類ずつ計4種類に対応しています。完全に予防できるわけではありませんが、感染した場合に重症化を防ぐ効果はあります。13歳以上は1回、13歳未満は2回のワクチン接種が必要で、最初の接種からおよそ1カ月後に免疫力がピークに達し、その後3カ月くらいは効力が持続します。12月中旬までに接種すれば、流行期の3月まではカバーできるでしょう。

 ―発症した場合の治療薬として、昨年3月から保険適用になった「ゾフルーザ」が注目されています。

 ゾフルーザは、1回の内服で済むという利便性はありますが、12歳未満の小児では、薬が効かなくなる耐性ウイルスの出現頻度が高いため、慎重に投与するよう日本感染症学会が提言しています。

 外来での治療薬は、内服用のタミフル、ゾフルーザと吸入型のリレンザ、イナビルがあり、内服も吸入も困難な場合はラピアクタの点滴も考慮します。服用方法に違いはありますが、効果はほとんど変わりません。吸入型は上手に吸うのが難しいのですが、喉の奥から呼吸器系に直接効くので効果的です。小さな子どもでも吸い込めるよう、ネブライザー(吸入器)を使うタイプのイナビルが今季から発売されました。

 ―感染しないためには、どんなことに注意すればよいですか。

 インフルエンザを避けるには、なるべく人混みに入らないよう心がけるべきでしょう。ショッピングモール、新幹線やバスの車内など、空調が効いて乾燥した密閉空間はウイルスが好む場所なので、特に気をつけてください。

 今季の流行が早かったのは、秋に開催されたラグビーW杯が影響している、とも言われています。通常、南半球で流行したウイルスは、北半球が冬を迎える時季に北上します。今年はW杯に合わせて多くの観戦客が南半球から来日したため、流行が早まった可能性があります。

 来年の夏は東京オリンピック・パラリンピックが開かれます。その頃、南半球は真冬でインフルエンザの流行期です。訪日客はラグビーW杯を大きく上回り、夏でも流行する危険性が高まると考えられます。今年以上に注意が必要です。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年12月02日 更新)

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