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玉野市がん対策条例制定1年 50代の大腸内視鏡検査呼び掛け

岡山赤十字病院玉野分院で大腸内視鏡検査に取り組む横山分院長

 日本人の死因1位である「がん」の予防、早期発見を図る玉野市がん対策推進条例が昨年12月に制定されて1年を迎える。全国のがん患者数は約100万人と過去最多を更新し、中でも大腸がんが最も多い。早期発見に向け、専門家は、大腸がん検診の定期受診に加え、「50歳になったら内視鏡検査を」と呼び掛ける。

 ベッドに横になった70代男性の肛門から大腸内視鏡を挿入すると、モニターにピンク色の腸壁が映し出された。

 「きれいな腸ですね」。岡山赤十字病院玉野分院(同市築港)での、横山祐二分院長による検査は、始めてから10分余りであっさり終わった。男性は妻を大腸がんで亡くしており、便が細くなったことを心配して受診。幸い、がんとなる可能性のあるポリープはなかった。苦痛を伴うこともある内視鏡検査だが、「痛みはなかった」と男性。

 40代から増加

 玉野分院では2018年春、大腸内視鏡を使った検査と治療に力を入れる神戸赤十字病院から横山分院長を迎えた。今夏には、病変を詳細に観察できる拡大内視鏡を導入。苦痛の少ない挿入法を用い、大腸内視鏡検査数は18年度68件と前年度の3倍を上回る。

 大腸がんは40代から増え始め、年齢が高くなるほど増える。高齢化率が4割近くと全国平均を上回る市では、早期発見と治療は喫緊の課題ともいえる。横山分院長は「便秘と下痢を繰り返したり、親族に大腸がんを患った人がいたり、気になる点があったら早めに受診を。大腸がんは早期発見して治療すれば100%近く治る」と呼び掛ける。

 最新の統計では、全国でがんと診断された人は99万5千人に上り、そのうち大腸がんは15万8千人と最多。生活習慣の変化による“現代病”の側面が強く、肉を多く食べる人ほど発症しやすい。肥満や喫煙、過度の飲酒もリスク要因だ。

 早期発見にはがんに伴う出血が便に混じっていないかを調べる便潜血検査を年1回、受けることが有効。国立がん研究センターのサイトでは、「毎年受診することで大腸がん死亡率が60%減る」と推奨されている。

 受診率向上へ力

 厚生労働省が16年に実施した国民生活基礎調査によると、大腸がん検診の受診率は男性44・5%、女性38・5%と半数に満たない。市は40歳以上を対象に検診を500円(70歳以上200円)で実施する。さらに市がん対策推進条例を受け、本年度は仕事帰りの人向けの「ナイター検診」を1回から2回に増やし、受診率向上に努める。

 ただ、便潜血検査が陰性でも「がんがない」とは言い切れない。岡山大病院消化器内科の原田馨太助教は、同検査の有効性を強調しながらも、「進行がんでは3分の1が検査で見逃されたとの研究報告がある」と指摘。検診で引っ掛かったことがなくても、「加速度的に大腸がんが増える年齢の50歳になったら、1度は内視鏡検査を受けて」と呼び掛ける。

 原田助教は「がんでも早期発見できれば、多くは内視鏡で治療できる。外科手術と比べ体への負担が少なく、入院も短期間で済む」と訴えている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2019年12月05日 更新)

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