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23 口腔アレルギー症候群 花粉症のある子は注意

 祥子ちゃんはアレルギー性鼻炎のある小学五年生の女の子です。先日学校給食でキウイを食べたら、急に口の中がイガイガし腫れぼったくなりました。保健室に行って、うがいをしたりして休んでいましたら、三十分くらいで治まりました。いままでキウイは食べたことはありませんが、メロンやスイカ、他の果物は食べても何ともありませんでした。これからキウイが給食に出たらどうしたらよいか心配です。

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 近年カバノキ科、イネ科、キク科の花粉症(アレルギー性鼻炎)のある患者さんに果物、野菜、ナッツ類に対するアレルギーが合併する例があることが報告されています。

 その病気は、ある果物や野菜、ナッツを食べておよそ十五分以内に、直接触れた唇や舌、のどの奥の違和感、かゆみや 腫 ( しゅ ) 脹 ( ちょう ) を訴える 口腔 ( こうくう ) 症状を主とするために、口腔アレルギー症候群(OAS=Oral Allergy Syndrome)といわれています。

 この原因は、花粉とある種の果物や野菜、ナッツに共通抗原性があるからなのです。花粉を吸入することでアレルギーの準備段階ができ(これを感作成立といいます)、次にこの花粉抗原と共通抗原を持つ果物や野菜、ナッツを摂取することでアレルギー症状を発症(交差反応といいます)するのです。

 これらの抗原は一般的には熱や消化酵素に対して壊れやすいので胃腸に達した段階ではその抗原性を失うために口腔症状が主として出現するといわれています。ですから熱の加わらない新鮮な野菜や果物が発症しやすいのです。しかしナッツ類は熱が加わっても安定しているところが少し違います。

 祥子ちゃんはアレルギー性鼻炎があるので、多分花粉症があり、初めて食べたキウイにこのような症状を起こしたものと思われます。保健室で少し休んでいたら落ち着いたように、少量や一、二回の摂取で普通は重篤にはなりませんが、頻回食べたり大量に摂取することにより、じんましん、流涙、鼻汁、吐き気、腹痛や下痢、気管支ぜん息の発作を起こしたり、最悪の場合はアナフィラキシーという命にかかわる重篤な症状を起こすこともありますので、一度経験した食物は二度と食べないことが一番安全です。

 分からないで食べて、もし経験したことのある食物が入っていることが分かったら、すぐ吐き出し、うがいをしましょう。またアレルギー性鼻炎がひどい人は逆に、OASが報告されている食物を食べるときには、少量を試しに食べて安全性を確認してからたくさん食べましょう。この病気の発症年齢は就学年齢前後からぼつぼつみられるようですが、今のところ乳幼児にはみられないようです。

 またラテックスアレルギーがある人(ゴムやゴム手袋にかぶれる)が、ある種の果物、野菜、ナッツ類で同様の発症をすること(ラテックス―フルーツ症候群)も最近では報告されていますので付記しておきます。

 (西原修美・岡山医療センター皮膚科医師)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2006年04月15日 更新)

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