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第3回 倉敷中央病院 心カテーテル治療 光藤和明副院長 国内屈指、2万3000例の実績

狭心症患者のカテーテル治療を行う光藤副院長(奥)

 心臓の冠動脈が狭くなったり詰まる狭心症や心筋 梗塞 ( こうそく ) 患者の手首、太ももの血管からカテーテルという細い管を入れ冠動脈を広げる心カテーテル治療。循環器内科主任部長の光藤和明副院長は、手術に比べ患者の体への負担が小さいこの治療で、わが国の草分け的な存在。国内で最も早い一九八二年に始め、二万三千例余の治療を重ねてきた。

 二〇〇六年に後進の医師四人と手掛けた治療は千五百二十例と全国屈指の多さ。その数もさることながら、特筆されるのは卓越した治療成績。最も治療が難しいとされる慢性完全 閉塞 ( へいそく ) の患者でも八割を超す初期成功率を収めている。多くは、他の医療機関が手に負えず治療を依頼してきた症例だ。

 「血管を広げる技術に定評のある医師が倉敷にいるらしい」。光藤副院長の名前が医療関係者だけでなく一般にも一躍知られたのは〇一年。ビザ発給が中国との外交問題にもなった台湾の李登輝・前総統の来日が、光藤副院長の治療を受けるためだったからだ。

 光藤副院長は倉敷中央病院で診療の傍ら、他の医療機関に請われ治療や指導に出掛けることもしばしば。国内だけでなく、アジアを中心に海外へも年二十回前後渡っている。李前総統は台湾で治療にかかわった患者の一人。「経過観察のための来日だった」と光藤副院長自身は淡々と語るが、海外の要人が東京の大病院や大学病院でなく、地方の民間病院を頼ったことは驚きを呼んだ。

 ただ、そもそも「世界標準を超える最良質の医療を倉敷という地域で実現する」のが光藤副院長の年来の目標。「たとえ素晴らしい病院があっても遠方では誰もがその恩恵を受けられない。特に救急患者は近くの病院にかかるしかない」からだ。そのために、一九八一年から毎月、地域の診療所などと症例検討会を続け、今日求められる「病診連携」を先取りした「地域チーム医療」の体制を築き上げてきた。

 循環器内科のほか、八〇年の開設以来五千四百例余の手術を行ってきた心臓血管外科の外来、検査・治療施設、病棟を集約した待望の心臓病センターが二〇〇五年に完成。「いかに迅速に治療するかが急性患者を救うポイント」と、心臓病専用の救急車「モービルCCU」の入り口からカテーテル室、CCU(集中治療室)をエレベーターで直結した施設で、センター長として治療の陣頭指揮に当たっている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年02月05日 更新)

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