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ドクターヘリ運航5年目 現場出動か病院間搬送か 消防の対応まちまち 事例検証、的確な判断を

過疎地の重篤患者を都市部の高度医療機関に搬送するドクターヘリ=新見市新見のヘリポート

 川崎医科大付属病院(倉敷市松島)のドクターヘリ運航が始まって5年目。事故現場などから都市部の高度医療機関まで直接、医師が治療しながら運ぶ「現場出動」で救命率向上に成果を挙げる一方、いったん救急車で地元病院に運んでからヘリを呼ぶ「病院間搬送」が出動件数の6割を占めるなど、地域によって活用法に違いがある。人命にかかわるだけに、双方のメリット、デメリットを検証しながら的確な対応が求められている。

 二〇〇二年夏、新見市の山林で左手首を草刈り機で切断した山村隼人さん(68)=同市千屋井原。現場出動したドクターヘリが近くのグラウンドに着陸し、川崎医科大付属病院に直行。救急車なら一時間ほどかかる所要時間は約二十分で済み、腕は幸いにも手術でつながった。「山奥だけにヘリがなければ、今ごろどうなっていたか。本当にありがたい」と振り返る。

出動2倍に

 同病院のドクターヘリ出動件数は昨年度、四百三十七件。一年目の二百四件から約二倍に増加した。このうち現場出動は四割ほどの百九十二件で、残り二百四十五件は、救急車で運んだ病院で処置できずヘリを要請した病院間搬送だった。

 新見市消防署管内では昨年度、全体の五十七件のうち現場出動は三件。救急隊員は地元病院にまず患者を運び、ヘリ要請の判断を医師に委ねる方針を取っている。尾崎邦征署長は「救急隊員の処置を受けながら現場でヘリを待つより、地元病院でいち早く治療を受ける方が患者のリスクは小さい」と説明。津山圏域消防組合や真庭消防署でも病院間搬送が多い。

 一方、高梁市消防署管内は逆の状況。昨年度、五十四件のうち三十八件が現場出動。現場から高度医療機関に直接運ぶ方が、結果的に時間のロスが少ないという判断。難波増雄署長は「現場の隊員の判断を優先してヘリ要請することに、地元医師会も理解を示している」と言う。倉敷市消防局などでも現場出動が圧倒的に多い。

 県内の消防の対応はまちまちだが、現場出動が九割以上を占める千葉県、神奈川県に比べ、県内は病院間搬送が多い。

情報の公開必要

 ドクターヘリを派遣する川崎医科大付属病院高度救命救急センターの荻野隆光副医長は「住民は、地元病院で救急患者をどこまで迅速に処置できるかなどを知っておいた方がいい。緊急時にドクターヘリを積極的に活用できるよう行政、医療機関に要望することも大切」と話す。地域の救急医療体制について市民への情報公開の必要性も指摘する。

 県施設指導課でドクターヘリ事業を担当している森下恵主事は「現場出動、病院間搬送のどちらが患者にとって良い判断だったか、各消防で一つ一つ事例を検証し、適切にヘリを要請できる体制づくりが重要」と話している。


ズーム

 ドクターヘリ 事故や急病の発生現場に救急専門医らがヘリコプターで駆け付け、重篤患者を治療しながら高度医療機関まで搬送する。厚生労働省の事業として、試行を経て川崎医科大付属病院に2001年4月、全国で初めて本格導入された。消防などの要請で出動し、同病院のヘリは岡山、広島、香川県などが主な運航エリア。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年09月29日 更新)

タグ: 医療・話題

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