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岡山・浦安小 精神保健福祉功労で大臣表彰 児童と障害者 自然な交流 運動会や収穫作業 開かれた取り組み評価

慈圭病院の運動会で患者と一緒にシャワーボールを楽しむ浦安小児童ら

 岡山市浦安本町の精神科病院・慈圭病院と26年にわたり交流を続けている浦安小学校(同所、461人)が12日、本年度の精神保健福祉事業功労者として厚生労働大臣表彰を受ける。同表彰は医療・福祉関係者が多く、学校が対象になるのは初めて。触れ合いを通じて子どもたちが精神障害者を自然に受け入れ、社会復帰の壁となる偏見を生まないという開かれた取り組みが高く評価された。

 秋晴れの六日、慈圭病院のグラウンドに、にぎやかな子どもたちの歓声が響いた。同病院の運動会。入院患者約二百人がゲストの浦安小の一~四年の児童たちと一緒に、ボールを投げ合うシャワーボールや玉入れなどの競技を楽しんだ。芝生の上を駆け回る児童の姿に、患者の表情も明るい。

 浦安小と慈圭病院は道路を挟んですぐの距離にある。交流は一九七九年に小学校の文化展に患者の作品を出品したのがきっかけ。その後、徐々に交流を広げ、八五年から計画を立てて行き来するように。サツマイモの植え付けや収穫、運動会など年間七、八回の交流を重ね、二〇〇二年からは総合学習にも位置づけられている。

 「話しかけても反応がなく、戸惑っている子もいた」。そんな声に、昨年からは同病院の医師を学校に招いて講義、病気の特性などについても理解を深めている。

 東馬英子校長は「いろんな人がいて、それを理解するという教育の大切なことを体験を通して伝えられるし、子どもも自然に受け入れているよう」と話す。

 「入院生活が長年にわたる人には子どもの活発な姿が刺激になっている」と慈圭病院生活療法課の大島泉課長。病気が原因で家族と離ればなれになっている人には、児童に家族の姿を重ねることもあるという。

 精神障害者は幻聴などによって奇妙な言動が起こりがち。マイナスイメージを持たれやすく、社会復帰の際の壁にもなりやすい。

 二〇〇一年に大阪教育大付属池田小学校で起きた校内児童殺傷事件では、加害者の精神科への入・通院歴などが大きく報じられた。「精神障害者は危険と思われて、交流に影響がなければいいがと心配した」と慈圭病院の村上基幸事務次長は振り返る。

 だが、学校や地域との交流は継続、取り越し苦労に終わった。「長い間の交流の積み重ねが生きた」と村上次長は言う。

 子どもたちは何を感じているだろうか。運動会に参加した四年の西山航(わたる)君は「女性と握手したら、手が温かかった」。同じく四年の山田尚輝君は「一年の時から交流しているけど、ここの人たちはみんな優しい」と話した。

 浦安小の卒業生という保護者の女性(39)は「私たちのころは交流がなく、ひょっとしたら偏見があったかもしれない」と振り返り、「偏見は大人が植え付けるもの。先入観を持たない真っ白な状態で触れ合い、感じることが何より大切なのでしょう」と話していた。

 同表彰は全国で四十個人・十三団体が受賞。岡山県内では、浦安小のほか、倉敷市・児島地区の家族会会長の井之口當江さんが選ばれている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年10月12日 更新)

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