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(8)糖尿病サポートチーム 倉敷中央病院糖尿病内科主任部長 亀井信二

DISTのメンバーは週に2回、治療への介入が必要かどうかを医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、事務職員らで検討しています

亀井信二氏

 糖尿病は今や国民病と言ってよいほどに患者数が増加しており、わが国の糖尿病患者数は予備群を含めると2千万人と言われます。国民の5~6人に1人、高齢者の3~4人に1人は糖尿病と考えられますから、糖尿病は高血圧症や脂質異常症と並ぶ最も身近な生活習慣病です。

 当院は病床数1166床の倉敷医療圏の中核となる急性期総合病院で、年間手術件数、救急車受け入れ数はともに日本最多レベルの実績があります。当然ながら全病院的にみても糖尿病患者さんは多く、さまざまな科での治療時、例えば手術時や抗がん剤治療時に血糖管理が必要となる機会が極めて多いのが現状です。個々の医師、看護師が対応可能なレベルをはるかに超える多くの患者さんの血糖管理を、いかに適切かつ迅速に、しかも安全に行うか、これは病院全体の問題であります。

 この難題に対して、当院では患者さんの血糖値などの検査結果をスクリーニングし、必要があれば糖尿病内科が積極的に介入できるような多職種による糖尿病サポートチーム、英語の頭文字を取ってDIST(ディスト)(Diabetes Inpatient Support Team)が機能しています。前主任部長である松岡孝先生が2016年に立ち上げられ、以降継続的に活動しています。

 現在のメンバーは亀井信二、藤原大介、村上和敏(以上、糖尿病内科医師)、藤原恭子(糖尿病看護認定看護師)、廣畑順子(管理栄養士)、友野美絵(同)、笹田みどり(薬剤師)、笠原真由美(医療秘書)、石原孝平(情報システム課)の9人です。メンバーを2班に分け、週2回、スクリーニング基準(HbA1c7・0%以上、血糖値200mg/dL以上)を超えた症例で治療介入が必要と考えられる症例をカンファレンスで検討し、その場で介入方法を決定しています。毎週15症例前後がカンファレンスにかけられ、討議内容を診療録に専用テンプレートを使用し記載しています。

 糖尿病内科の直接介入以外にも、主治医への検査、食事変更の依頼、病棟ラウンドや院内啓蒙活動など、介入内容は多岐にわたります。イメージとしては、栄養サポートチームの糖尿病版と考えていただければわかりやすいかと思います。また、このカンファレンスで初めて糖尿病の診断を受けた患者さんも昨年1年間で16人おられ、その後の治療継続につながっています。

 また、外来での手術などの患者さんにも迅速に対応可能なシステムも構築して機能しており、他科の治療時に糖尿病内科の血糖管理介入が迅速に開始できるようになっています。おそらく迅速かつ適切に血糖管理が開始され、トラブルなく安全かつ的確な血糖管理状態が達成できていると自負しております。

 今後は私たちの活動が、患者さんの治療にどのように貢献できたか、さまざまな角度から解析検討し、当院発のエビデンスとして広く発信できればと考えます。

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 倉敷中央病院(086―422―0210)

 かめい・しんじ 山口県立下関西高校、山口大学医学部卒。山口大学医学部附属病院、川崎医科大学附属病院を経て、2018年4月に倉敷中央病院糖尿病内科部長、翌年7月より糖尿病内科主任部長を務める。日本内科学会認定医・指導医、日本糖尿病学会専門医・指導医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年03月17日 更新)

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