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アトピー性皮膚炎治療の基本 岡山市民病院・秋山尚範部長に聞く 悪化因子の除去 適切なスキンケア ステロイド副作用に注意

「アトピー性皮膚炎の治療の基本は、特に悪化因子の除去が重要」と話す秋山部長

 アトピー性皮膚炎は皮膚の乾燥(バリア障害)とアレルギーが合わさって発症する。特にバリア障害があると、かゆみが起こると同時に多くのアレルゲンや病原微生物が簡単に皮膚内に侵入する。冬場を迎えるこれからの季節、皮膚の乾燥に気を付けよう。岡山市立市民病院(同市天瀬)皮膚科の秋山尚範部長に、アトピー性皮膚炎の治療の基本を聞いた。

 治療の基本は悪化因子の除去、内服薬・外用薬による湿疹(しっしん)の抑制、適切なスキンケアの三点です。特に悪化因子の除去が重要で、悪化因子を除去しないと治癒しません。

 例えばダニやホコリを除くため、じゅうたんを外してふき掃除をした後に掃除機をかける。室内では犬、猫、鳥などのペットを飼わないようにする。乳児期には卵などの食物が原因でじんましん、皮膚炎が起こることがあります。食物日記をつけて食物と皮膚炎の関係を観察し、原因がはっきりした場合にはその食物を除去します。

 また、非ステロイド外用剤、保湿剤、ハンドクリーム、シャンプー、せっけん、洗剤、化粧品、消毒液(ポピドンヨード)、酸性水(濃い塩素水)などのかぶれにも注意を。皮膚に触れるすべての物が、かぶれを起こす可能性があり、それまで長期間安全に使えていた物が、ある日突然かぶれて使えなくなります。

 夏場、発汗とともに悪化する場合には歯科金属、金属を多く含む食品(チョコレートなど)といった金属アレルギーが原因のことがあります。さらに強い太陽光に当たったり、とびひなどの細菌感染症、ヘルペスなどのウイルス感染症の後にも皮膚炎が悪化するので注意を。さらに夜間、皮膚をかくことにも注意します。

 外用薬治療による湿疹の抑制として、ステロイド軟こうを使用せざるを得ませんが、使いすぎによる副作用に気を付けてほしい。ただ、使用を急にやめるとリバウンドになるので、ゆっくり減らしていきます。

 タクロリムス軟こう(商品名プロトピック)は、ステロイド軟こうのように皮膚委縮、赤ら顔、リバウンドなどの副作用は見られませんが、刺激感が高率に見られます。近年、連続使用は二週間までとされており、使いすぎを避けます。

 適切なスキンケアとしては毎日入浴し、無添加せっけんを使って手で洗いましょう。冬場はせっけんの使用量を減らし、保湿剤はかぶれない物を使います。

 合併症として目のまわりをかく、たたくことで白内障や網膜剥離(はくり)が見られます。顔面のステロイド軟こうを急に中止してリバウンドで悪化したときに、目のまわりをかく、たたくことが最も危険です。

 アトピー性皮膚炎は悪化因子を除去しなくても、ステロイド軟こうを外用すると一時的には症状は治まります。しかし、症状を抑えているだけなので、悪化因子をそのままにしていると次第に効かなくなったり、時に症状が悪化します。この場合に、よりきついステロイド軟こうに替えると、また症状は治ります。そうして次第にきついステロイド軟こうを外用せざるを得ない状況になるのです。

 現在、ステロイド軟こうを外用している場合には、悪化因子を除去して薬をゆっくり減らしていくことになりますが、かなりの努力が必要です。アトピー性皮膚炎の発症早期に悪化因子の除去がうまくいくと、治癒する可能性が高いと考えています。

 経過が長い大人の方は悪化因子が多数同時に見られ、すべての悪化因子の除去が困難なこともあり、ステロイド軟こうの外用も続けざるを得ないのですが、できる限り悪化因子を除去して少しずつでも軽快させ、ステロイド軟こうをゆっくり減らしていくことが重要です。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年11月08日 更新)

タグ: 健康皮膚アレルギー

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