文字 

医療崩壊危機 院内感染防ぐには 倉敷中央病院・上山医師に聞く

院内感染の危険性や防止策について語る上山医師

 医療従事者の新型コロナウイルス感染が相次ぎ、各地で医療崩壊の危機に直面している。地域医療を守るため、病床の確保とともに重要なのが院内感染の防止だ。県内の指定医療機関で最多の感染者対応病床を確保している倉敷中央病院(倉敷市美和)の上山伸也医師(感染症診療)は「入院中の感染患者よりも、感染したことを知らない無症状者がウイルスを持ち込むリスクの方が高く、医療崩壊の引き金になりかねない」と語る。

 ―県内で医療崩壊の恐れはあるのか。

 倉敷中央病院は感染者に対応できる病床を10床確保しているが、近隣の地域でクラスター(感染者集団)が発生すれば一瞬で埋まる。そもそも患者に対応できるスタッフは限られている上、院内の感染対策にかなりのマンパワーを取られる。そうなると、他の救急診療や手術を通常通り行うことは難しくなるだろう。院内感染は何としても回避しなければならない。

 ―各地で医療従事者の感染が相次いでいる。

 医療現場は日々、感染への恐怖の中で戦っている。倉敷中央病院には感染が疑われる患者が毎日10人ほど搬送され、うち2~3人は専門医でも感染の見極めが難しい。そのたびに医療用マスクやアイガード、長袖ガウンなどでの対応が必要だが、特にマスクやアイガードは不足の懸念があり、今後、患者の受け入れに支障を来しかねない状況だ。

 ―感染者の約8割を占めるとされる無症状者や軽症者からの感染をどう防ぐかが課題となっている。

 実は専門医にとっては感染が判明している患者は怖くない。最新の論文によれば、十分な対策を講じた場合、入院患者からの感染リスクはほとんどないとされている。国内での院内感染の事例を見ても、最も危険なのが、別の病気の診療や検査で来院した無症状の人らが感染していることを知らないまま感染源となるケースだ。

 ―院内感染を防ぐ手だては。

 大きく分けて三つある。まずは職員の行動管理だ。倉敷中央病院では風邪症状があれば軽微であっても出勤停止としている。併せて出張や私的な外食、遠出なども制限している。二つ目は院内での手指消毒の徹底。仮にウイルスが入り込んでも、マスクの装着と併せれば、ある程度は防げる。院内は重症化リスクが高い患者が多く、面会の禁止も徹底しなければならない。患者、家族の双方に負担をかけることになるが、協力を求めていきたい。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年04月21日 更新)

ページトップへ

ページトップへ