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岡山でもオンライン診療広がる 県は対応55施設をHP掲載

来院による外来を休止しオンラインで診療を続けている菊池院長(きくち脳神経外科内科クリニック提供)=画像の一部を加工しています

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、パソコンやスマートフォンの動画通信で診察するオンライン診療が岡山県内で広がり始めた。通院で外出する患者の感染リスクを減らし、医師や看護師らの院内感染を防ぐことが期待できる。4月から新たに初診のオンラインも可能になり、来院による外来診療を休止し、オンラインのみに切り替えた診療所もある。

 オンライン診療は原則、再診の患者に限定していたが、厚生労働省は感染終息までの特例措置として、初診についても電話での診療を含めて4月13日から解禁した。県は対応する県内の医療機関55施設(電話診療を含む、5月1日時点)の一覧をホームページに掲載している。

 きくち脳神経外科内科クリニック(岡山市中区関)は解禁初日の13日から来院外来を休止し、電話とオンラインにした。2週間で初診のオンラインも7件診療した。

 患者は民間のオンライン診療サービスのホームページやスマホのアプリから予約し、1回10分程度、動画で受診する。脈を取る触診などはできないが、菊池陽一郎院長(41)は「しっかり問診すればかなりの情報が得られる」とし、「感染を防ぎながら診療をストップしない手段として活用したい」と、当面続ける方針だ。

 2016年から一部の病気でオンライン診療を実施してきたみやはら耳鼻咽喉科(同市南区福浜西町)は今年3月から花粉症やアレルギー性鼻炎、4月24日からは軽いのどの痛みや鼻水、せきの人にも対象を広げた。

 再診患者のみが対象で利用は月に数件ほど。宮原孝和院長(52)は「オンライン診療の認知度が高まれば、利用が増えるのでは」と話す。

 一方、総合病院では、倉敷中央病院(倉敷市美和)が主治医以外の専門医に意見を求めるセカンドオピニオン(保険診療外)でオンラインを導入している程度。「通信設備など大規模な体制整備が必要で、まだ検討にも至っていない」(県南の総合病院)という施設が大半だ。

 オンライン診療は、日本医師会が重症化や病気の見逃しリスクがあるとして反対してきた。今回の特例措置も「特例中の特例であり、例外中の例外」としており、導入には慎重な医療機関が多い。

 ただ、新型コロナの感染を避けようと患者が外来受診を控えれば、症状を悪化させてしまう恐れもある。

 日本遠隔医療学会の近藤博史会長(鳥取大医学部付属病院教授)は「感染拡大を見越し、各医療機関が備えておくことは重要。初診で行う場合は、重症化や見逃しリスクを想定し、医師と患者が十分に情報共有できる仕組みづくりが欠かせない」と指摘している。

 オンライン診療 1997年にへき地や離島などで認められ、2015年にそれ以外の場所の一般診療でも認められた。厚生労働省は初診患者は原則として対面診療としていたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、時限措置として初診からの全面解禁に転換した。公的医療保険が適用され、初診時の患者の自己負担(1~3割)は最大642円となる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年05月06日 更新)

タグ: 倉敷中央病院

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