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第26回 川崎医大病院② 頭頚部がん 粟飯原輝人講師(耳鼻科) 熱中性子照射療法で成果

ホウ素中性子捕捉療法をする粟飯原講師

 ホウ素をがん細胞にだけ集め、熱中性子を照射、がん細胞だけを死滅させるホウ素中性子捕捉療法で世界最多の治療実績を挙げる川崎医大。 粟飯原 ( あいはら ) 講師がその推進役となり、原子炉を利用した最先端医療で成果を挙げている。

 首、のど、口腔、鼻など首から上、目から下の頭 頚 ( けい ) 部に発生するがんは耳鼻科、口腔外科、放射線科のチームで取り組む。一般的には切除手術、抗がん剤投与の化学療法、放射線照射の三つを組み合わせ治療する。

 粟飯原講師は鼻に悪性黒色腫のある患者にこの療法を実施。ホウ素を点滴で注入、がん病巣に原子炉で熱中性子を四十分照射した。三週間後から腫瘍が縮小し八カ月後に消失した。「この治療法では世界で初めて鼻腔悪性黒色腫に対する治療を行い、優れた治療効果を挙げた。一回で済むメリットがあり、この治療法の適用範囲を広げたい」と意欲的。

 この四年間、頭頚部がん三十例にこの治療を行い「奏功率(部分寛解、完全寛解)は80%を挙げ、世界をリードしている」。

 神経、血管が交錯する顔面で、鼻、口などの機能を温存しながらがん病巣を切除するなど頭頚部がん治療は難しい。それに取り組んで十五年、最先端医療を導入し、今、働き盛りの手術医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2008年08月26日 更新)

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