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下肢静脈瘤「グルー治療」開始 岡山県内初、痛みや合併症少なく

「下肢静脈瘤の治療は、その症状、患者さんの体質、生活状況、ニーズなどを総合的に判断しながら行います」と話す諸國眞太郎院長

 脚の血管がこぶのように膨らむ下肢静脈瘤(りゅう)。見た目が悪く、脚のだるさやむくみを引き起こす。諸國眞太郎クリニック(岡山市北区錦町)は2月から、医療用接着剤を利用して血管をふさぎ、静脈瘤をなくす最新治療「グルー治療」(血管内塞栓術)を岡山県内で初めて開始した。現在、主流となっている血管内焼灼(しょうしゃく)術などに比べ、痛みなどの患者負担や合併症が少ないのが特長だ。

 心臓から送り出された血液は、動脈を流れて全身に酸素と栄養素を届けた後、老廃物を伴い静脈を通って心臓に帰る。脚の静脈には逆流を防ぐ弁がいくつもあり、これが機能しなくなると皮下静脈に逆流が起こって血がたまり、静脈瘤ができる。網目やくもの巣状に見えたり、ひどくなると色素が沈着して脚が黒くなったりする。皮膚がただれて潰瘍ができる場合もある。女性や、立ち仕事の多い職業の人に目立つという。

 グルー治療は、専用の接着剤(グルー)をカテーテルで注入し、血管内をふさいで逆流を止める。接着剤は、脳血管などの治療に使う医療用接着剤をベースに作られている。血管をふさいでも、血液は他の静脈を迂回(うかい)するので支障は無い。麻酔は最初の1カ所だけで、手術時間は片脚で30分弱。その日からジョギング程度の軽い運動ができるという。昨年12月に保険適用になった。

 血管内焼灼術は麻酔が複数箇所必要なうえ、血管内をレーザーや高周波で焼いてふさぐため、周辺組織の損傷が避けられない。痛みや神経障害など合併症の恐れがあった。

 諸國眞太郎院長(岡山大学医学部臨床教授)は血管外科が専門。岡山第一病院(岡山市中区高屋)の理事長でもある。2005年、県内で初めて下肢静脈瘤のストリッピング手術(血管を引き抜く手術)と血管内レーザー焼灼術の日帰り治療を始めた。これまで7千例以上を手がけている。

 グルー治療を行うメリットは大きいとされるが、諸國院長は「その判断は慎重でなければならない」と指摘する。と言うのも、医療用の接着剤であっても体内に残ることにより、皮膚が赤くなるなどのアレルギー反応が出る可能性があるからだ。

 諸國院長は「超音波検査に加え、アレルギー体質なのかどうか、ADL(日常生活動作)の状況などを総合的に勘案しながら診療している。血管内焼灼術やストリッピング手術がより適している場合もあり、患者さんの生活、ニーズも踏まえながら最適な治療法を提供したい」と話している。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年05月18日 更新)

タグ: 心臓・血管

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