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「小規模多機能型介護」が来春制度化 ケアの本質見失うまい グループホームフォーラム(倉敷)でも注目 「通」「泊」「住」を一ヵ所で

来年4月から制度化される「小規模多機能型居宅介護」などについて議論を交わした全国宅老所・グループホーム研究交流フォーラム

 来年4月からの介護保険制度改正で制度化される「小規模多機能型居宅介護」。利用者の在宅生活を支えるため、一つの事業所で通所や宿泊など複数のサービスを提供できるようになる。すでに似たようなサービス内容を展開している民間デイサービス事業所や宅老所もあり、介護関連の幅広い事業者の注目を集めている。12、13日に倉敷市で開かれた全国宅老所・グループホーム研究交流フォーラム(同フォーラム実行委など主催、山陽新聞社など後援)でも、制度化を歓迎する声が上がる一方、利用者が主体となったケアの本質の重要性をあらためて強調する意見が出るなど、活発な議論で盛り上がった。

 小規模多機能型居宅介護のサービス内容は、利用者が日中過ごす事業所への「通い」を中心に状況に応じて「泊まり」もでき、職員による家への「訪問」も随時受けられる。さらに、「住まい」の場も事業所に併設できる方向で検討されている。厚生労働省担当者の説明によると、一事業所の登録者数は二十五人程度、一日当たりの「通い」の利用者は十五人程度、「泊まり」の利用者は五~九人程度。

 利用者が一事業所で複数のサービスを切れ目なく受けられると、職員となじみのある安定的な人間関係を築けるメリットがある。また、住み慣れた環境で暮らせるように利用者の日常生活圏域内でのサービス提供を想定。原則として、事業所を指定した市町村の住民のみを保険給付の対象とするなど、地域密着型サービスを打ち出している。

 既存の民間デイサービス事業所や宅老所は改修した民家などを使い、介護の必要な高齢者を少人数受け入れて日中預かっている。利用者側のニーズに応じて「通う」「泊まる」「住む」という切れ目のないサービス提供に先駆的に取り組んできたところもあり、小規模多機能型居宅介護の原点ともいえる。

 島根県出雲市にある「ことぶき園」は一九八七年、既に小規模多機能型老人ホームとして開設。開設理由などを報告した槻谷庸子園長は「小規模多機能は、誰もが居心地のいい空間で過ごせるようにと実践する中で生まれてきた形。制度化は後からついてきたものだが、大きな進歩だと思う」と語った。

 現行の介護保険制度では、設備や人員の面から民間デイサービス事業所や宅老所での「泊まり」を認めていない。制度開始後、事業所によっては「泊まり」を自主事業で継続したり、中止した所もある。利用者はなじみのない施設のショートステイを使わざるを得ないこともある。

 こうしたことから、新たな環境に慣れることが難しい認知症高齢者は混乱し、状態の悪化を招く場合もある。

 例えば、認知症高齢者が介護サービスの利用施設が変わった後、自宅に戻ると、それまでなかった夜尿が見られるようになるといったケースだ。

 認知症の女性が別の施設でショートステイし、再びぶどうの家に戻ってきた例を紹介したのは倉敷市船穂町にある宅老所「ぶどうの家」管理者の津田由起子さん。「利用者の生活が制度によって“輪切り”のようにされてきた」と指摘し、サービス提供の在り方について「利用者のニーズを制度に当てはめるのではなく、その人が望む生活を支えると結果的に幾つかの制度に当てはまっていくもの」とした。

 フォーラム全体を通して、参加者からは民間デイサービス事業所や宅老所での実践が制度化されても、利用者主体のケアの本質は変わらない、また見失ってはならないとの意見が相次いだ。

 のどか宅老所(津山市)の矢山修一代表は「多機能とは、デイサービス事業所がショートステイもグループホームも行うという多角経営ではない。利用者が主体となった『活用する制度』でなければならない」と強調していた。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年11月23日 更新)

タグ: 介護高齢者福祉

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