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自閉症の療育活動へNPO事務局長になる金子啓子さん「”地域で自立”目指して」 <いんたびゅー 聞く 語る>

金子啓子さん

 自閉症の療育プログラム・TEACCHを学ぶ倉敷親の会(八十人)が発足して五年。活動を広げるため近くNPO法人「ケセランパセラン」として再出発する。旗揚げを前に事務局長に就任する金子啓子さん(赤磐市山陽)に聞いた。

 ―「ケセランパセラン」の名はユニークだ。

 金子さん 幸せを呼ぶとして東北地方の旧家に伝えられているといわれる謎の生物名から取った。妖精とも言われている。自閉症児たちは特異とも見られる行動から、かつて異星人とも呼ばれた。その子どもたちを妖精のように育てたい、とこの名を付けた。

 ―自閉症の言葉は知っていても障害の内容についてはよく分からない人が多い。

 金子さん 生まれつきの発達障害ということが分かり、コミュニケーションがうまくできない、社会性が欠けている、興味・関心の範囲が非常に狭いことが特徴。調査では千人に五人か六人という数字がある。行動上の問題は重いものから軽いものまでさまざまで、軽度のものは学習障害に似たものになる。文部省の調査では知的障害は伴わないが学習や行動に問題のある子どもは小中学生の6・3%おり、決して少ない数ではない。誤解されやすい障害で、失語症や引きこもり、うつ病と混同されることもあり、周囲の無理解から本人や保護者が傷つくことは多い。

 ―今年四月には発達障害者支援法も施行された。

 金子さん 自閉症は身体、知的、精神障害者施策の谷間に置かれていたが、これで「障害」として認知され、画期的なことと受け止めている。法律は障害の早期発見、就労の機会確保、都道府県に専門支援センター、医療・保健・福祉・教育など専門家の確保を掲げており、大きな期待がある。

 ―TEACCHの先進地の米国・ノースカロライナにも行かれた。

 金子さん 四年前に家族で訪れた。街には多くの障害者(自閉症)がいるが周囲と解け合って、みんな幸せそうにニコニコ働いて暮らしていたことが印象深い。日本でも早くこうなりたい。障害者が地域で自立して生活する―この夢を実現するためにもNPO法人を立ち上げ、活動を広げていきたい。

 ―二十六日には倉敷市民会館で講演会を開く。

 金子さん 知的障害のある自閉症で川崎市職員として働く明石徹之さんと母親の洋子さんが「お仕事がんばります」と題して話す。徹之さんはテレビにも取り上げられて反響を呼んだので、ご存じの方もいると思う。母親の洋子さんが、知的障害もある徹之さんをどう育てたか、どういう過程で徹之さんが社会で働けるようになったかが聞ける。質疑応答の時間も用意している。保護者だけでなく広く一般の人にもぜひ聞いてほしい。(午後一時開演。参加費二千円)

メモ

 TEACCH 「自閉症及び関連するコミュニケーション障害の子どものための治療と教育」の英語の頭文字による造語。自閉症と学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などを含めた周辺障害の療育支援モデルで米国・ノースカロライナ大学で始まり、国際的に普及。日本には川崎医療福祉大の佐々木正美教授によって紹介された。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年11月23日 更新)

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