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「まち」イメージした医療複合施設 倉敷スイートホスピタル(倉敷市中庄)松木道裕院長

松木道裕院長

明るく開放感のあるロビー。自動演奏によるピアノのメロディーが流れている。一つの「まち」をイメージしてデザインされた病院には、サービス付き高齢者向け住宅、レストラン、ビューティーサロン、コンビニなどが備わっている

 ―病院の特徴を教えてください。

 当院は一つの「まち」をイメージし、サービス付き高齢者向け住宅(倉敷スイートレジデンス)、訪問看護・介護ステーション、レストラン、カフェ、ビューティーサロン、コンビニ、保育所までを合築した医療複合施設です。病院機能としては急性期から慢性期までトータルに対応しています。

 当院には三つの役割があると考えています。

 一つが急性期病院の後方支援です。川崎医科大学付属病院、倉敷中央病院をはじめとして倉敷、岡山市内の特定機能病院などと連携を図り、できる限り患者さんを早期に受け入れ、在宅療養に向けて支援をします。

 二つ目として、地域のみなさまに安全で安心できる医療を提供することです。地域包括ケアにも積極的に取り組んでいます。自宅や、入居されている介護施設で肺炎や骨折などを発症し、ADL(日常生活動作)の低下した患者さんに入院していただき、再び在宅療養に戻れるよう医療・介護の支援を行っています。

 三つ目は、専門領域の診療のさらなる充実です。関節リウマチ治療には「リウマチセンター」があり、内科・整形外科が一つのチームとなって先進的な医療を提供しています。糖尿病診療においては、糖尿病教室などを通して専門医、管理栄養士、専門看護師、リハビリスタッフが患者さんの生活を支えています。

 ―専門は糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病と聞いています。

 生活習慣の変化や肥満の増加から2型糖尿病は増え続けており、予備軍を含めると国内で2千万人になります。糖尿病患者の増加、罹病(りびょう)期間の長期化によって合併症を有する患者さんも増えています。現在問題となっているのは糖尿病腎症です。糖尿病腎症から人工透析に至る場合が多く、新規に透析導入される患者さんの40%を占めます。いかに重症化を予防するかが直近の課題で、それには早期発見、早期治療が欠かせません。

 ―糖尿病では血糖値のコントロールが大切ですね。

 新規の作用機序を持つDPP―4阻害薬、SGLT2阻害薬の2種類の血糖降下剤が使えるようになり、血糖コントロールは比較的容易になってきています。これらの薬剤は血糖値の改善効果だけでなく、合併症である心血管疾患、腎症の発症や進展の抑制につながり、合併症予防の観点からも期待できます。

 新型コロナウイルス感染症では、糖尿病や、それに伴う腎不全などの合併症があれば免疫機能が落ちるので、ウイルスに感染したり重症化しやすくなります。ここでも大切なのは血糖値のコントロールです。きちんとコントロールできていれば心配ないと患者さんには言っています。

 ―終末期医療についてはどのように取り組んでいますか。

 患者さんにはこれまでの人生があり、生活があります。しかし、事故に遭ったり体調が急変したときにどうするのか。患者さんと家族が医療者や介護者らと一緒に、現在だけでなく、意思決定能力が低下した場合に備えて話し合い、終末期を含めた医療や介護、本人に代わって意思決定をする人を定めておく必要があります。それがアドバンス・ケア・プランニング(ACP)です。当院でもACPを取り入れ、患者さんと家族、主治医、医療ソーシャルワーカー、看護師らが話し合う場を設けています。

 ―倉敷スイートホスピタルの展望について教えてください。

 高齢化が進み、医療現場においても影響が出てきていますが、医療資源には限度があります。いかに効率的なシステムを構築し、なおかつ患者さんに寄り添った医療、介護をどう実現していくのかが課題となります。そこには、われわれが提供する医療サービスに対して、患者さんの満足度を高めていく工夫が欠かせません。一歩、二歩先を見据えて地域に親しまれ、信頼される病院を目指します。

 まつき・みちひろ 大分県立大分上野丘高校、川崎医科大学卒。川崎医科大学大学院修了。同大学講師、准教授、川崎医療福祉大学教授を経て2012年から現職。日本糖尿病学会専門医、日本内科学会総合内科専門医。

 ■倉敷スイートホスピタル
倉敷市中庄3542の1
086―463―7111
 【診療科】内科、整形外科、リウマチ科・リウマチセンター、消化器外科、糖尿病内科など21科
 【病床数】196床
 【ホームページ】http://sweet-town.jp/
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年06月01日 更新)

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