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(1)総論 笠岡第一病院院長 橋詰博行

かつては島であった横島という瀬戸に建つ笠岡第一病院の全景。左に横島と、神島八十八ヵ所霊場で有名な神島を結ぶ神島大橋が見える

真鍋島への診療同行(右端は筆者)

非定型大腿骨骨折(左:術前CT画像、右:術後X線画像)

橋詰博行院長

 瀬戸内海に面した笠岡湾の入江の狭くなった、これまた瀬戸(狭い海峡の意味がある)という風光明媚(めいび)な海岸沿いの細道を抜けると、私どもの笠岡第一病院が忽然(こつぜん)と姿を見せます。この地で地域医療を担う病院として多くの研修医の先生方に働いていただいています。今回よりシリーズでドクター研修を中心に他のコ・メディカルも含めていろんな研修のタイプを紹介し、地域医療の実際を県民の皆さまにもご理解いただけたらと思います。

 新専門医制度が発足して数年たち、私ども地域の中小病院にもコンスタントに研修医の先生方が来ていただけるようになりました。基幹病院である岡山大学病院、川崎医科大学附属病院、倉敷中央病院と連携し、その研修コースの一環として研修医を受け入れているわけです。

 2019年度に特筆すべきは長年来希望していた岡山県地域枠卒業医師を受け入れることができたことです。その医師は岡山大学消化器内科に入局し2年間の初期研修後、福山市民病院での専門医のための研修を経て、地域医療従事兼内科研修のため医師4年目の19年4月より当院で常勤医として勤務していただいています。一般内科・消化器内科医として消化管内視鏡検査など含めて当院の診療を支えながら内科・消化器病・消化器内視鏡専攻医として専門医となる準備もしているわけです。地域の皆さまの信頼を得ながら、われわれ地域の病院として大学や大病院では経験できないことを研修していただけたらと考えています。

 専門医を目指した専攻医の研修プログラムでは先に述べた三つの基幹研修施設と連携して、19ある基本領域のうち当院では内科・小児科・整形外科・泌尿器科・眼科・救急科・リハビリテーション科・総合診療科の8基本領域において、基幹施設の定める研修プログラムに沿って研修します。19年度は、岡山大学より10~12月の3カ月間整形外科医師が、また4月から倉敷中央病院の救急科より2人、内科より2人ずつ各々3カ月間、1年間切れ目なく研修されました。

 救急科の先生は研修中に、整形外科の指導医のもとで経験された症例を投稿し、「Atypical femoral fracture with bisphosphonate use(非定型大腿骨骨折)」のタイトルで英文誌に掲載されました。

 さらに以前小児科で研修され、今度の二度目では総合診療科の専攻医として6カ月の長期間にわたり研修された先生もおられます。

 初期研修医は1カ月という地域枠の中で研修していただいています。19年度は岡山大学より1人、川崎医科大学より2人、倉敷中央病院からは3人の先生方でした。さらに、岡山大学医学部学生を地域医療体験実習として5日間の受け入れをしています。

 それぞれ外来・入院患者の診療から手術の手伝いや当直まで1週間のスケジュールを決めて、忙しく働いていただいています。笠岡の島しょ部での診療にも同行することもあります。笠岡は超高齢化が進んでおりますが、若いエネルギーにあふれた研修医の先生方のおかげで病院も活気にあふれています。

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 笠岡第一病院(0865―67―0211)

 はしづめ・ひろゆき 岡山大学医学部卒、同大学大学院医学研究科(整形外科学専攻)修了。岡山済生会総合病院勤務、岡山大学医学部附属病院勤務(整形外科)、岡山大学医学部助教授(同)を経て2017年5月から笠岡第一病院院長。岡山大学医学部臨床教授。日本整形外科学会専門医、日本手外科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本リハビリテーション医学会指導責任者、日本リウマチ学会指導医、日本プライマリ・ケア連合学会認定指導医。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年06月16日 更新)

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