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早期の前立腺がん 広がる小線源治療  岡山大病院が昨年から治療 3泊4日入院、体への負担軽く

前立腺がんの小線源治療で使用する装置を前に、治療を説明する那須助教授

 早期の前立腺がんで、小さな放射線源(ヨード125)を前立腺に埋め込み、内側から腫瘍(しゅよう)に照射する小線源治療が広まっている。体への負担が軽く、入院期間は三泊四日程度と、前立腺を摘出する開腹手術の二週間前後に比べ短い。岡山県内で唯一行っている岡山大病院(岡山市鹿田町)では昨年一月以降、全国の医療機関で三番目に多い約百七十人が治療を受けた。泌尿器科の那須保友助教授は「日本での長期の治療成績はまだ分からないが、先行する欧米では手術と効果が同等。患者にとり治療の選択肢が広がった」と意義を語っている。

 小線源治療は放射線治療の一種。一九九〇年ごろから米国で普及。日本では二〇〇三年九月から、放射線源を管理する設備を備えるなど基準を満たした医療機関が行えるようになった。実施施設は次第に増え、今年末に約四十カ所に上る見通し。医療関係者の関心は高く、今月中旬に岡山大であった技術講習会には全国六十三施設の約二百三十人が参加した。

 ヨード125は非常に弱い放射線源。長さ四・五ミリ、直径〇・八ミリの棒状のチタン製カプセルに密封されている。治療は、あおむけになった患者の肛門から超音波装置を入れ、直腸そばにある前立腺の画像を見ながら行う。性器と肛門の間に筒状の針を刺して前立腺内に入れ、その針を通し六十~百個のカプセルを入れる。治療は下半身麻酔で約一時間。岡山大病院では泌尿器科と放射線科が共同で行う。

 カプセルは永久に前立腺内に残るが、放射線量は徐々に弱まり一年後にはほぼ出なくなる。治療は保険が適用され、患者負担は三割の自己負担分で約二十五万円。

 岡山大の治療実績は東京医療センター、慈恵医大(ともに東京)に次ぐ。患者は六十代が中心。この治療を受けるため石川、鹿児島県などから受診した人もおり、岡山県外が半数を占めている。

 患者は退院後三カ月に一回通院。前立腺がんの指標になるPSA(前立腺特異抗原)を血液検査で調べる。「治療開始二年弱を経た現在、がんが再発、転移した例はない」と那須助教授。副作用で半数の患者が頻尿を訴えるが、半年以内で治る。手術の後遺症で問題になる尿漏れはなく、性機能障害も少ないという。

 岡山大は前立腺がんの医療拠点を目指し治療の選択肢を充実させている。早期がんの場合、小線源治療のほか、開腹手術▽腹腔(ふっくう)鏡手術▽がんを増殖させる男性ホルモンの働きを注射で抑えるホルモン治療▽体外からの放射線外照射▽超音波を集積し体外から照射する高密度超音波治療―などがある。現在は患者の半数が小線源治療、四分の一ずつが開腹手術とホルモン治療を選択している。ただ、前立腺肥大などに伴い前立腺が大きくなっている場合、小線源治療は行えない。

 小線源治療の対象はがんが前立腺内にとどまる早期に限られる。早期の前立腺がんは自覚症状がなく、PSAによる検診を行う自治体もある。岡山市では昨年検診を受けた五十代以上の男性の0・9%にがんが発見され、うち八割は早期だった。那須助教授は「進行すると根治が難しく、治療の選択肢もホルモン治療中心に限定される。検診が重要だ」と訴えている。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2005年11月29日 更新)

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