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“禁煙センセイ”効果発信 川井医師

禁煙センセイこと川井治之医師。「肺がん患者を減らしたい」と、ネット上での発信を続ける

 5月31日は「世界禁煙デー」。インターネット上のブログやツイッターで“禁煙センセイ”を名乗り、禁煙の効果や利点を発信している医師が岡山市にいる。岡山済生会総合病院(同市北区伊福町)のがん化学療法センター長で禁煙外来を担当している川井治之医師(43)=腫瘍(しゅよう)内科・呼吸器内科。取り組みのきっかけと手応えを聞いた。

 〈生命保険に安く入ろう! 非喫煙者はお得です。最近ではノンスモーカー割引なるものができています。ぜひとも、皆さんもたばことおさらばしてみませんか?〉

 ブログ「禁煙センセイの“楽しく禁煙”」の、ある日の内容だ。

 川井医師の専門はがんの抗がん剤治療。これまで肺がん患者を500人以上診てきたが、治療のかいなく亡くなる人があまりに多い。その現実に「燃え尽きそうになったこともある」。

 「とにかく主原因であるたばこの害を取り除かなければ」と2000年、前任の南岡山医療センター(岡山県早島町)でニコチンパッチの処方や喫煙習慣を見直す指導を行う禁煙外来を設立。02年に赴任した岡山済生会総合病院でも、禁煙外来を受け持っている。

 ブログを始めたのは09年5月から。喫煙はがんや脳こうそく、糖尿病などのリスクを高めることがすでに知られているが、「悪影響を書き連ねるだけでは関心が広がらない」と川井医師。その内容をのぞいてみると―。

 〈たばこを吸う女性は吸わない女性より5歳以上も肌が老化している。禁煙は肌の健康に良い〉〈異性にもてるには? 製薬会社の調査では、結婚するならたばこを吸わない人―男性70・0%、女性50・0%〉〈たばこをやめると、たばこ代に相当する年間11万円が貯まる。旅行にでも行きませんか?〉

 ちょっと気になる、お得で耳よりの情報が分かりやすい文章で紹介されている。「たばこをやめればこんなにいいことがあると感じてもらえれば、自然と禁煙につながるはずです」と力を込める。

 読者との双方向のやりとりも魅力。「たばこにはストレス解消効果がある」と主張する愛煙家には、「たばこで解消されるのはニコチン切れのストレスにすぎない」などと疑問に答える形で約1カ月間、濃密なやりとりを続け、禁煙に導いた例もある。

 1日200~300件のアクセスがある。週2回の更新を目標に、川井医師がパソコンに向かうのは早朝や忙しい仕事の合間。ネットを通じて収集した、研究論文や企業の調査データ、新聞や本などの情報から、医師の知見で選び取った情報を発信する。

 昨夏からはつぶやきのような短文を投稿するツイッターも始めた。たばこ関係のニュースを細かく紹介し、閲覧登録者は現在約1300人。川井医師は「ブログやツイッターは、禁煙の強力な啓発手段。今後も正しい知識や情報を提供し、1人でも多くの人の禁煙を岡山から手助けしたい」と語る。

 アドレスはブログ(http://smoke-free.cocolog-nifty.com/blog/)、ツイッター(http://twitter.com/smoke_free_way)
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2010年05月30日 更新)

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