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(2)攻めの姿勢で地域救急医療を守る 津山中央病院救命救急センター長 前山博輝

ドクターカーで出動する救急医ら

前山博輝氏

 津山中央病院救命救急センターは岡山県北唯一の3次救急(心停止患者や血圧低下など重症な症例)対応ができる施設です。そのカバー範囲は津山英田地域、真庭市、兵庫県佐用町に及び、東京都の約1・5倍の面積にもなる広大な地域を担当しています。

 1次救急(風邪など歩いてくる症例)、2次救急(肺炎や骨折など救急車で搬送される症例)も対応しており、地域救急医療の最後の砦(とりで)として古くから県北医療を守ってきました。当センターとして地域医療を守るために以下のような方策を掲げています。

 (1)重症な症例に対して都市部と遜色のない救急医療を提供する。

 脳梗塞に対する脳血管内治療(血管内の血の塊をカテーテルで回収する)、心停止に対するECMO(人工心肺装置)導入、心筋梗塞に対する心臓カテーテルによる治療、外科系の緊急手術、緊急内視鏡が常にできるのは県北で当院のみです。重症な症例を断ることなく継続的に稼働させることが、地域救急医療を守る最大の方策であると考えています。

 (2)ドクターヘリ、ドクターカーを有効活用する。

 ドクターヘリに関してはキーワード方式(救急要請の段階で車が横転している、突然倒れたなどのキーワードがあれば救急車の出発と同時にドクターヘリ要請をする)を導入し、いち早く医療を提供できる体制を構築しました。

 また、当院は岡山県で唯一の救急ドクターカーを稼働させており、救急医が現場に向かい治療を始めるシステムを10年以上続けています。最近では地域の住民の皆さまにご協力いただきドッキングポイント(救急車とドクターカーの接触場所)を設定しています。

 しかし、ドクターヘリは夜間や悪天候日では飛べず、また倉敷から県北まで来るのに時間がかかる面があります。今後は当院のドクターカーが夜間や休日でも稼働するようにシステムを構築していく必要があります。

 (3)集中治療における症例の予後改善を目指す。

 重症症例は救急外来で治療が終わることはなく、集中治療室で治療が継続されます。各種プロトコール使用や早期リハビリ、スタッフへの勉強会・シミュレーショントレーニングなどを行い治療の質を高め、命を救うだけではなく元の生活に戻っていただけるよう、日々スタッフと協力し診療を行っています。

 その他、病院内救急救命士の採用、ITを活用した診療、ECMOチームの構築などさまざまな体制を確立しています。これからも現状のままで満足せず常に攻めの姿勢を保ち、地域の方々が安心できる救急体制を構築してまいります。

     ◇

津山中央病院(0868―21―8111)

 まえやま・ひろき 岡山大学卒業。ドクターヘリ出動件数日本一の但馬救命救急センターで約8年救急集中治療の修練を積み、病院前救急医療の知識技術を競う全国大会で優勝の経験を持つ。2020年4月より現職、3児の父。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年09月07日 更新)

タグ: 津山中央病院

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