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専門医のチーム医療を推進 岡山済生会総合病院(岡山市北区国体町) 塩出純二院長

塩出純二院長

ダビンチを使って行われた初の膵臓がんロボット支援手術の様子。治療の難しい膵臓がんを根治に導く手術法として期待が高まっている=8月12日(岡山済生会総合病院提供)

 ―4月に院長に就任し、何を一番に手掛けられましたか。

 理念と基本方針を見直し「患者本位の安心・安全な質の高い医療」を第一に掲げました。安心・安全が最も大切だと思っています。

 ―新型コロナウイルス感染症が収まりません。岡山済生会総合病院も対応を求められていますね。

 当院は感染症指定医療機関ではありませんが、公的病院として、行政からの要請に応えねばなりません。8月からコロナ患者専用の病棟を設けました。以前は既存の病棟をゾーン分けし、扉をつくって区切っていたのですが、専用病棟は別のフロアにあり、動線も一般の患者と交わることが全くありません。医療スタッフも別チームで勤務するので、皆さんに安心していただけると思います。

 4月の緊急事態宣言時には、県外からの患者の受け入れを中止しました。急を要さない外科手術や内視鏡の施術、予防医学健診センターでの健康診断も延期をお願いしましたが、5月連休明けには解除しました。現在は全ての来院者に玄関で赤外線カメラの検温を実施するなど感染予防策を徹底し、通常の診療体制に戻しています。自費でのコロナの検査はしていませんが、手術や特殊な検査を受ける方で、主治医が必要があると認めれば、院内でPCR検査を行っています。

 ―積極的に開催していた市民セミナーや講演会は中止になったままです。最新の医療情報が得られず、不安な方もおられるのではないでしょうか。

 コロナの対応と同時に、がん検診の受診などが遅れないよう、皆さんに呼び掛けることが大切です。10月17日に胃の健康をテーマにした市民セミナーを予定しており、定員を絞るなどの対策を講じた上で実施するつもりです。状況を見ながら、順次再開していきたいと考えています。

 ―入院機能を中心とした新総合病院が開院して4年あまりたちました。200メートルほど離れた外来センター病院との機能すみ分けはうまくいっていますか。

 最初は行ったり来たりで苦労しましたが、今はスタッフも慣れてきました。こちら(総合病院)は静かな広いスペースがあり、落ち着いて療養できます。手術室と集中治療室(ICU)をはじめ、内視鏡センター、CTやMRIの画像診断センター、放射線治療センターなど専門的な治療の機能が整っています。

 肝臓病センター、糖尿病センターなどもあり、診療科の縦割りを超えた「センター医療」に力を入れています。医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、さまざまな職種が集まり、臨機応変にチーム医療の体制を組むことができます。

 ―高齢化に伴い、複数の疾患を抱えている人が増えていますね。

 例えば、がんの外科手術を受ける方が糖尿病や心臓病、腎臓病などを合併していることがよくあります。私は専門医同士のチーム医療を進めていきたいと考えています。

 直接、糖尿病の治療を目的に入院される方は年間約300人ですが、外科や整形外科の手術が目的だったり、別の疾患で入院されたりする方の中にも、もともと糖尿病を合併している方が約600人いらっしゃいます。その場合、糖尿病専門医も担当医の一人として加わり、トータルでその人を診ていきます。

 外科医が手術に集中するためにも内科系の医師の協力が必要です。うちは診療科の垣根が低く、すぐにチームをつくれることが強みだと思っています。

 ―がん手術では、ダビンチを使うロボット支援手術が広がっています。

 当院は昨年10月からダビンチ手術を開始しました。直腸がんに次いで今年1月から前立腺がん、8月には膵臓がんでも導入しました。膵臓がんは4月から保険適応されたばかりで、県内では初めてです。体の侵襲が少なく、より安全な手術法として期待しています。

 消化器がんの手術を多く行ってきましたが、近年は肺がん、乳がん、前立腺がんなどが増え、化学療法も充実しています。最終的には緩和ケアという選択肢もあります。1998年に緩和ケア病棟を開設し、これまでに4千人以上の方を診てきました。経験豊富な専門医と専属の看護師がそろっています。

 県済生会には急性期医療の病院だけでなく、多様な老人ホームや福祉施設があり、介護保険による訪問サービス、通所サービスも提供しています。かかりつけ医とも連携し、その方の希望に応じた選択肢を提示したいと思っています。

 しおで・じゅんじ 金光学園高校、自治医科大学医学部卒。西粟倉村国保診療所、大原町国保病院、市立備前病院などで内科医として勤務。岡山大学第一内科での研修、津山中央病院内科部長などを経て1989年に岡山済生会総合病院へ赴任。内視鏡センター長、副院長を務め、今年4月に院長就任。岡山大学臨床教授、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医など。

 ■岡山済生会総合病院

岡山市北区国体町2―25

086―252―2211

 【診療科】内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、糖尿病内科、外科、呼吸器外科、消化器外科、乳腺・内分泌外科、肝臓・胆のう・膵臓外科、血管外科、脳神経外科、心療内科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、放射線科、緩和ケア内科など35科

 【病床数】473床

 【ホームページ】https://www.okayamasaiseikai.or.jp/inpatient/
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年09月07日 更新)

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