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(3)チーム力でコロナ禍でも肺癌ロボット手術を提供 津山中央病院外科部長呼吸器病センター副センター長 西川仁士

津山中央病院呼吸器ダヴィンチチーム

ロボット支援下で行われた肺癌手術の様子

西川仁士氏

 当院ではダヴィンチシステムを用いたロボット手術に対応した新手術室が造設されたのを機に、昨年末よりロボット支援下肺癌(がん)および縦隔腫瘍手術(RATS)を岡山県北地域で初めて開始しました。昨今の新型コロナウイルスの流行下においても、病院を挙げての感染拡大防止措置と入院時検査などで厳重な対策をとることにより、緊急手術や悪性腫瘍手術をはじめRATSについても運用を継続できています。

 RATSは従来の胸腔鏡(きょうくうきょう)手術(VATS)と同様に小さな傷で手術を行うことにより、疼痛(とうつう)軽減や早期回復を実現できることはもちろん、双眼鏡での3D画像と、多関節を有する鉗子(かんし)の使用で、VATSでは角度的に困難なことが多かった操作を、思いのままの角度から容易かつ安全に行うことが可能です。

 また、手振れがないことから、肺癌手術において特に繊細な操作が求められる血管鞘(しょう)や気管支鞘の剥離などでは威力を発揮します。RATSは機器の進歩によりますます発展する可能性を持っており、今後が期待されます。

 一方、患者さまにとっては、新しい医療機器で治療を受ける場合、何かと不安を感じることが多いと思いますが、私たちはその不安を解消すべく、地域密着型病院ならではのチーム力を結集して手術診療にあたっています。

 まず、人工心肺装置など高度な医療機器の操作に精通した当院の臨床工学技士チームによる術中のロボット操作サポートと日頃のメンテナンスにより安心して安全に手術に臨むことができています。また、呼吸リハビリテーションチームによる術前からの熱心な呼吸訓練指導と術後の手厚いリハビリにより、ハイリスクな症例でも極めて低い合併症発症率で早期回復、早期退院が実現できています。

 さらに、常に向上心のある手術室・ICU・病棟の看護チームによって患者さまの苦痛や不安にきめ細かく対応した周術期管理がなされています。そして何よりも当院は各診療科間の横のつながりが良好であるのが特徴で、例えば術後の肺炎など呼吸器合併症が起こってしまった場合には、呼吸器内科や感染症内科、麻酔救急科などによる迅速な介入、最適な対応を行っています。

 RATSは、北隣の鳥取大学病院や県南の岡山大学病院でも多く行われていますが、地域密着型病院ならではの総合チーム力で、県北地域の患者さまがわざわざ遠くまで行かなくても当院で質の高い先進医療を受けていただけるような環境を提供し続けられるよう、今後も研さんを積んでいこうと考えています。

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津山中央病院(0868ー21ー8111)

 にしかわ・ひとし 産業医科大学卒、岡山大学大学院博士課程修了。2017年より津山中央病院に勤務。医学博士、外科専門医・指導医、呼吸器外科専門医、気管支鏡専門医・指導医、がん治療認定医、肺がんCT検診認定医、移植認定医、禁煙指導医、産業医学ディプロマ、ダビンチコンソールサージョン。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年09月21日 更新)

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