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(1)手根管、肘部管、CRPS 岡山赤十字病院第一整形外科部長リウマチ科部長リハビリテーション科部長 小西池泰三

小西池泰三氏

 岡山赤十字病院整形外科の役割は「フットワーク軽く多くの整形疾患に対応する」ことと考えています。整形外科は上肢、脊椎、外傷、人工関節などの専門分野に分かれて活動しています。今回から6回の連載で整形外科の各専門医が代表的疾患のポイントや当院における取り組みについて述べさせていただきます。

 ■整形外科の手術について

 外科手術の目的が患者さんの生命を助けることとすれば、整形外科の手術目的は患者さんの生活の質を上げることです。その手段は神経への圧迫をとるか(除圧)、不安定な組織を安定化(固定)することです。これらのことを低侵襲で行うためにいろいろな手術法やインプラントが開発されています。

 ■手のしびれについて

 手のしびれは肘や手、頚椎(けいつい)が原因のしびれがあります。これを簡単に見分ける方法があります。薬指を縦に二つに分け、親指側、小指側とします。

 (1)親指側の知覚が明らかに低下=図1

 手のひらで正中神経が障害される手根管(しゅこんかん)症候群です。親指から薬指の半分までがしびれるのが特徴です。

 (2)小指側の知覚が明らかに低下=図2

 肘で尺骨(しゃっこつ)神経が障害される肘部管(ちゅうぶかん)症候群です。薬指の半分から小指がしびれるのが特徴です。

 (3)両者の知覚に差が無い。

 手や肘の障害ではなく、頚椎あるいは整形疾患以外の可能性があります。

 手根管症候群や肘部管症候群の原因は神経への圧迫で、これは薬やリハビリではとれません。手術(除圧)が必要ですが、手術自体は簡単です。神経の障害が重症化する前に手術したほうが、術後の成績も良好です。

 薬指で明らかに知覚が違うことは重要な所見なのです。

 ■CRPS

 手の疾患のなかでCRPS(複合性局所疼痛(とうつう)症候群)というものがあります。手術後や外傷の後に指を動かさないでおくと、手が腫れます。通常は1週、2週と経過するにつれて腫脹(しゅちょう)は軽減するのですが、逆に腫脹が増悪することがあります。

 当院での調査では100人に1人の割合で生じていました。異常な痛みを伴い、最終的には手が握り込めなくなるなどの障害が残ることがあります。早期(3週以内)に治療を開始すれば治癒するのですが、手の腫脹の時期を過ぎて手指が拘縮(こうしゅく)してくると治療が難しくなります。

 「上肢の疾患を治療する上で最も大事なことは、いかに早期に指を握り込めるようにするかである」と私は考えています。手がしっかり握り込めないなどの症状があれば早期に手外科専門医にご相談下さい。

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 岡山赤十字病院(086―222―8811)

 こにしいけ・たいぞう 岡山大学医学部卒。岡山市民病院、国立岩国病院、国立岡山病院、笠岡第一病院、赤穂中央病院を経て1999年より岡山赤十字病院勤務。日本整形外科学会専門医、日本手外科学会専門医、日本リハビリテーション学会専門医、日本リウマチ学会専門医。医学博士。岡山大学整形外科臨床教授。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年10月05日 更新)

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