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胸膜中皮腫にオプジーボ効果 岡山労災病院・藤本部長ら確認

藤本伸一部長

 岡山労災病院(岡山市南区築港緑町)の藤本伸一・腫瘍内科部長(52)らは、胸膜中皮腫が進行した患者に、がん免疫治療薬「オプジーボ」と抗がん剤2種類を投与する臨床試験(治験)で、半年以内に18人中14人のがん細胞を3割以上減らす効果があったことを確認した。実現していない初期治療からのオプジーボ投与が保険適用されれば、患者の生存率向上などにつながる可能性がある。

 岡山大病院(同市)など3医療機関と連携。2018年1月から、病状が進行して切除手術ができない患者18人(男女64~78歳)に、現在の標準治療である抗がん剤2種類と、オプジーボを、3週間ごと4~6回投与。その後はオプジーボだけで治療した。

 治療開始から1カ月半ごとに、がんによって膨らんだ胸膜6カ所の厚さをコンピューター断層撮影(CT)し、その合計を治療前と比べた。それにより最も効果があった患者はがんが75%減少し、息切れや痛みといった症状の緩和もみられた。

 抗がん剤2種類の投与では、がんが30%以上縮小する患者は約4割にとどまるとの報告がある。「治験では7割を超す患者に効果があった。胸膜中皮腫に対するオプジーボの有効性は明らか」と藤本部長。

 岡山労災病院は国内有数の胸膜中皮腫の研究・診療拠点。オプジーボの保険適用に向け、国の補助事業として医師主導治験に取り組んできた。

 藤本部長は「患者の体力がある初期段階から投与できれば効果はもっと上がるはず。治療の選択肢を広げるためにも、研究を続けたい」と話している。

 9月中旬にオンラインで開かれた欧州臨床腫瘍学会で成果を発表した。

 胸膜中皮腫 アスベスト(石綿)が主な原因とされるがんで、肺を包む「胸膜」の表面にある「中皮細胞」に生じる。診断後の生存期間の中央値は7・9カ月。抗がん剤2種類の投与が標準治療だが、副作用が強く6回程度の投与が限度とされる。初期段階でのオプジーボ投与の保険適用に向け、国内の複数グループが治験に取り組んでいる。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年10月17日 更新)

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