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(6)最新の上部消化管内視鏡検査と新たな診断機器開発 津山中央病院内科部長内視鏡センター副センター長 堀圭介

堀圭介氏

 当院内視鏡センターは岡山県下有数の内視鏡診療実績を有し、2019年度の上部消化管内視鏡検査件数は7250件であり、右肩上がりに増加しております。上部消化管内視鏡検査においては、胃がん検診、胃がんABC検診後のスクリーニング検査を含めたスクリーニング検査を積極的に行っており、近年、より細径化したハイビジョン経口内視鏡検査とともに、患者さまの苦痛を減らす経鼻内視鏡検査を積極的に行っております。

 胃がんのリスクファクターはピロリ感染症、食道がんのリスクファクターは飲酒の累積量と低いアルコール代謝能力であり、いずれも日本人、特に高齢の方々においては高リスクな方々が多い状況です。広範なスクリーニング内視鏡検査により、胃がんのみならず早期の食道がんの発見も増えてきております。

 胃がん、食道がんの拾い上げには高精細な画像および特殊な光を用いて画像を強調した内視鏡画像(image enhanced endoscopy=IEE)が有効とされていますが、当院ではすべての内視鏡室に最新世代の内視鏡機器を取りそろえております。画像強調を用いた拾い上げ検査、さらなる精密検査に用いられる拡大内視鏡検査に関しては高度な訓練が必要となりますが、岡山大学病院とも連携し、高度な訓練を積んだ医師による内視鏡検査を日々行っております。

 当院では、がんの早期発見を行うための最新技術の構築にも積極的に取り組んでおります。近年、人工知能(AI)による、内視鏡下での早期消化管病変の拾い上げ診断(computer assisted detection=CADe)の急速な発展が報告されつつあります。当院では、理化学研究所、国立がん研究センター東病院と連携してAIの研究開発を進めております。

 私たちの研究グループは早期胃がん検出用AI等、初期段階の成果を挙げつつありますが、臨床応用に足る十分な診断性能を確保するためには大量の教師用データ収集が必要となります。そのためには大学病院等アカデミアでの情報収集のみならず地域基幹病院でのデータ収集を視野に入れた研究体制が必要とされますが、データの収集にあたり臨床現場の医師に過大な負荷がかかる状況が予測されます。

 われわれは、データを生成する医師の負担を軽減するため、日常診療の所見データからAI用の教師用画像を自動取得するシステムの構築に取り組んでおります。

 コロナウイルス感染症による内視鏡診療への影響が懸念されますが、がんの発症率に変化が起こるわけではありません。当院では感染症の専門科が常駐している高度感染管理が可能な病院であり、厳重な感染対策管理の下、通常通りの検査、治療が行える体制を構築しております。検査控えにより進行した状態での発見とならないよう、安全な検査、治療を継続していく必要があるものと考えます。

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 津山中央病院(0868―21―8111)

 ほり・けいすけ 広島大学医学部医学科卒業後、岡山大学大学院医歯学総合研究科博士課程修了。岡山大学病院光学医療診療部、日本医療研究開発機構、国立がん研究センター東病院内視鏡科を経て2019年から津山中央病院内科部長、20年4月より内視鏡センター副センター長。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2020年11月02日 更新)

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