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第56回 倉敷平成病院 物忘れ外来 早期発見で進行抑制

認知症の女性と付き添いの家族に対し、治療について話す高尾理事長(中央)

高尾芳樹副院長

 「よくなってきているな。どれだけ改善しているか、次回は脳を詳しく調べて比較してみましょう」

 認知症治療をライフワークとする高尾武男理事長。5月上旬、認知症の70代の女性を診察した。

 診断から1年。薬の効能で症状の進行が抑えられ、付き添いの家族もひと安心の様子をみせた。診察室では高尾理事長の冗談も飛び、患者女性も「診てもらうのが楽しくて」と表情を緩めた。

 認知症専門の「物忘れ外来」(神経内科)。力を入れるのは早期発見だ。脳を活性化させるリハビリと内服を組み合わせれば、進行を遅らせることが可能になる。ただ、認知症への関心は高まっているとはいえ、本人が認めたがらないなどなかなか難しい面もある。

 高尾理事長は「早期発見には家族の気づきが重要。早期に受診すれば、本人が病気について理解し、家族も本人の意思を確認しながら今後の生活について考えることができる。『おかしいな』と思ったら診察を」と呼び掛ける。

 受診すると、MRIやCT(コンピューター断層撮影装置)、脳波などを調べ、長期的にフォローする。できる限り長く家族と一緒に家庭で過ごせるよう、リハビリプランを立てていく。

 高尾芳樹副院長は「自宅や地域での生活を大事にしてあげたい。認知症の人にとって環境が変わるのは精神的安定が失われ、マイナス。日常生活の中にプログラムを組み込んでいく」と強調する。

 一方、施設入所者には創作活動や趣味などを通して脳を刺激。漢字や算数など「学習療法」も積極的に導入、音楽療法士を迎えた演奏や楽器を使ったリズム体操など「音楽療法」も行っている。

 多彩な取り組みを支えているのは、“チーム力”。医師、看護師、臨床心理士、言語聴覚士、介護士らが定期的に開く勉強会や院内研究発表会を通して、患者のQOL(生活の質)向上を目指す。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

(2009年06月08日 更新)

タグ: 脳・神経

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